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センゴク恋姫記
第4幕 権兵衛隊長始末記
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年……ちょっと待ちなさい。それじゃあ、貴方の言う一石って、こちらの五石分ってこと!? それが二、三俵ですって……いえ、やはり分量も多分違うのでしょうね」

 ゴンベエはそこまで考えが及ばずとも、曹操はすぐに理解する。
 ゴンベエの価値基準や分量の知識においても、自分たちの知る知識とはかけ離れているのだと。

 そういう意味では、この作業は翻訳に近いすり合わせ作業でもあった。

「それは後で詳しく検証するとしましょう……その国の広さはわからないわね。じゃあ、その国では何人の兵が揃えられるのかしら?」
「尾張の兵力? そうじゃのう……通例で言うなら一万石で四、五百人として。えーと……五十じゃから……」
「……最大で二万五千ぐらいかしら?」
「そ、そうかのう……ハッハッハ」

 全く算用に明るくないゴンベエである。
 寝る間も惜しんで頑張ったからこそだが、検地帳が読めるのが奇跡に近い。

「一国で二万五千を養える……相当広いのかしら? いえ、それよりも収穫高がこちらと比べ物にならないほど多いのかしら? なんにせよ、興味深いわね」

 さすがは曹孟徳である。
 瞬時に問題の本質を見抜く所は、性別が変わろうとも劣ることはない。

 ちなみに一万石で四、五百人というは、織田の軍役規定である。
 ただ、織田の場合、正確には軍役の規模自体は自由酌量の面が強い。
 通例で言えば、領地五石に対し一人の軍役が通常であり、ゴンベエが千石取りだった頃の軍勢は、侍四人に雑兵十六人だった。
 五千石の大身になった時に二百人にまで増員、その後上津城周辺を任され、その家臣を傘下に四百五十以上の兵を率いている。

 戦国時代、ほぼ五公五民であったことから、一万石の収益は五千石。
 五百人近い軍勢を率いたゴンベエは、織田軍役規定の中でも兵役に重きを置いていたことになる。
 軍役が自由裁量の織田家であるがゆえ、その規模で忠誠をはかっていた面が強い。
 つまりゴンベエは、信長に対する忠誠心が高いと判断される一因がここにある。

「それで? 確か貴方も興味深いことを言っていたわね。槍一本で一万石とかなんとか。つまり、貴方は一万石ほどの領地を治めていたってこと?」
「そうじゃ。野洲五千石に上津領五千石、合わせて一万石じゃの」
「……つまり、貴方は太守どころか下手をすれば私と同じ刺史だってことかしら?」
「刺史?」

 刺史とは簡潔に言えば、その州の行政権を握る者である。
 戦国時代に照らせば大名ともいえ、そういう意味では曹操の指摘は誤りともいえよう。
 だが、太守が城代や城主とほぼ同義である以上、刺史を国主のそれと広義の意味で照らしあわせて見れば、当たらずとも遠からずになるやもしれない。

「よくわからんが……わしは確かに一万
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