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センゴク恋姫記
第4幕 権兵衛隊長始末記
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「……つまり、貴方の国は大陸の統一を目指していた、ということかしら?」
「うむ。日ノ本は、百年以上乱世が続いておる。各国の戦国大名が互いに争い合っての。その日ノ本六十余州を一代で纏めようとしておるのが、織田上総介信長様じゃ」

 ゴンベエが曹操の元にきて、すでに十日が経とうとしていた。
 身の回りのことや、この世界の常識を教えること数日。
 ようやくゴンベエは、この世界が自分のいた世界よりはるかに昔であることを理解していた。

 もっともそれは、厠や生活習慣、そして文明がゴンベエのいた戦国時代よりはるかに劣っていたからである。
 曲がりなりにも近江の国友衆や、雑賀の根来衆の製作現場を視察したゴンベエである。
 それに比べて、この時代の鍛冶の拙さに思わず目を覆いたくなったのであった。

 それをつい、曹操に愚痴ってしまったのがそもそもの発端である。

『なら、貴方の国のことを全て教えなさい。どうすればいいのか、貴方ならば知っているのでしょう?』

 その御蔭で連日、こうして曹操による質問攻めにあっているのであった。

「おだかずさ……長いわね」
「前も言った通りじゃが、基本は姓と通称で呼ぶのじゃ。この場合は織田上総介様という。もっとも、通称は官名などで変わるからの。今の信長様は織田弾正忠様じゃな」
「……ややこしいわね。それで諱で呼ぶことが多いのかしら?」
「信長様に至ってはそうじゃのう。じゃが、親しい間では元の通称を呼ぶことが普通じゃ。わし等ではそうもいかんがの」
「ふむ……まあいいわ。それで、その織田……信長という人物は、元は一国の領主だったのね?」
「うむ。最初は、尾張の守護代の分家でしかなかったそうじゃぞ? その親戚筋をまとめて尾張一国を統一なされたのじゃ」

 ゴンベエが語る事実に間違いはない。
 しかし、大幅に端折っていることは否めないであろう。
 尾張を統一するまでの信長は、一纏めにできないほどの苦労をしているのである。

「尾張一国……その尾張って国は、どのくらいの広さなの?」
「うーむ……尾張は五十万石以上と言われておるがの。広さは国としては普通かの」
「普通じゃわからないわよ……その、五十万石ってなによ」
「む? 米の石高じゃよ。尾張は米蔵とも呼ぶべき豊かな地じゃからの。津島や熱田といった商業の盛んな町もある」
「……米の取れ高? そんなもので国の力がわかるの?」
「当然じゃ。米の量は、すなわちどれだけ兵を養えるかでもあるからのう」

 ちなみに、この時代の中国の一石とは三十一キロである。
 ゴンベエの時代では、百五十キロが一石であった。
 この時点でかなりの相違が生まれている。

「一石は、大人が一年食べる米の量のことじゃ。米俵で言えば二俵か三俵かのう」
「一
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