緒方
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ーが一斉に対局を申し込み始めている。
呆然とその様子を眺めていた緒方は、自分だけ音沙汰なしということに思い至った。
「どういうことだ? まさか、オレにだけ連絡が来てないのか。それとも何か手順を間違えたのだろうか」
若干焦りを感じながらも、緒方はパソコンを軽く叩いたりさすったりしてみた。が、何も変わらない。緒方は自分を落ちつかせようと熱帯魚の餌を取り水槽に近寄った。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「緒方君は今頃、パソコンの故障を疑っているかもな。いや、繊細な奴のことじゃ、大好きなデメキンと戯れているかもしれんな。ヒャッヒャッヒャッ」
アルバイトで雇った孫にユーザー管理を任せていた桑原は、予め探っておいた緒方のアカウントにだけ、お知らせ通信を送らないよう指示していた。
『桑原殿、あの者が真実を知ったら気分を害するのでは?』
「なーに、ワシと緒方君の仲じゃ。こめかみに皺を作って喜びを現し、鍛えてくれてありがとうと感謝するよ。これも年長者としての務め。結局は緒方君の成長の糧となるはずじゃ」
「そうなのですか……」
「それよりも対戦相手を誰にするかの?」
今回はすぐに対局できる相手を募集しており、桑原はその対局をパソコンにかじりついているであろう緒方に見せてやるつもりだった。
「では、この者を相手にしたいと思います」
「ほう? 棋譜を見る限りプロのようじゃの」
桑原は棋譜を見ながら呟いた。
「おそらく和谷と同じ森下殿の門下かと」
「森下か。世間は狭いというがよくよく縁のあることじゃな」
桑原は『果たして偶然かの』と内心でつぶやくと、おぼつかない手つきで虎次郎の対局を組んだ。そして佐為は心ここにない桑原を顎で使い、あっけなく大差で勝利した。
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