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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
異聞 第四次ティアマト会戦(その3)
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ー元帥はミューゼル提督の戦死までは望んでいないでしょう。提督にもしもの事が有れば帝国軍の左翼部隊指揮官が戦死したとなります。当然ですが勝利は完璧なものとは言えない』
「なるほど」

『それ以上に元帥はグリューネワルト伯爵夫人の思惑を気にするはずです。伯爵夫人はこれまで政治的な行動はしていません。しかし閣下が戦死したとなれば如何でしょう? 特に故意に見殺しにされたとなれば陛下を動かして報復に出るのではないか、ミュッケンベルガー元帥はそう思うはずです』

確かにそうだ、姉上がどうするかはともかくミュッケンベルガーがそう考えるのはおかしな話ではない、いやそう考えなければむしろおかしい。なるほど、戦死は望んでいないか……。

『我々を使って反乱軍を消耗させる。我々が反乱軍の攻撃に耐えきれず壊滅しそうになった段階で救援し敵を撃破する。勝利はミュッケンベルガー元帥のものであり我々には何もない、兵力を磨り潰した敗残艦隊が残るだけです。おそらく我々分艦隊司令官は皆戦死しているでしょう』
ビッテンフェルトの言葉にロイエンタール、ミッターマイヤーが顔を見合わせた。目で会話をしている。“やれやれ”、そんなところか……。

『元帥の思惑ですが、一つは門閥貴族達への御機嫌とりでしょう。コルプト大尉の一件で提督はかなり彼らの恨みを買っている。我々を叩く事で彼らの歓心を買おうとしているのだと思います』
そうだろうな、だから分からない。何故フレーゲルは俺に好意を示すのだ?

『第二にミューゼル提督を押さえようとしているのだと思います。前回の第三次ティアマト会戦では後衛に配置された提督が帝国軍に勝利をもたらしました。ミュッケンベルガー元帥は反乱軍の艦隊運動に翻弄されるだけで効果的な反撃が出来なかった。その事は元帥にとって屈辱だったはずです』
「……」

『ここで提督を反乱軍に叩かせ、そして元帥自らミューゼル提督を救う事で、自分の恐ろしさを提督に叩きこもうとしているのだと思います。分をわきまえろ、自分の下に居ろ、そういう事でしょう』
「私の首根っこを押さえようという事か」
ビッテンフェルトが頷いた。

ロイエンタール、ミッターマイヤーが不思議そうな表情をしている。メックリンガー、ブラウヒッチ、キルヒアイスも訝しげだ。多分想いは俺と同じだろう。
「それにしても見事な心理分析だ、ビッテンフェルト少将」
『小官の考えではありません、ヴァレンシュタイン少佐の考えです。ただ事の本質を突いているのではないかと思います』
「うむ、私も同じ思いだ」

おかしかった、危機に有るにもかかわらず笑い声が出た。外見がビッテンフェルトで中身がヴァレンシュタインか……。豪勇、大胆にして繊細、緻密。面白い、この二人は常に俺の意表を突いてくれる。

「ミュッケンベルガー元
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