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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
異聞 第四次ティアマト会戦(その3)
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こまで俺を疎んじるか! 犠牲になるのは俺だけでは無い、百五十万の将兵まで無意味に死に追いやるのか!

怒りに震えている俺にフレーゲル男爵の声が聞こえた。
「もうすぐ総司令部からそちらに命令が届く、上手く切り抜けろ。私に言えることはそれだけだ」
「待て、何故私に教える。卿、何を考えている」

私の問いかけにフレーゲル男爵はそれまで浮かべていた冷笑を消した。彼の顔が能面のような無表情に切り替わる。
「卿が知る必要は無い。武運を祈る」
そう言うとフレーゲル男爵は無表情の顔のまま通信を切った……。

艦橋に戻るとメックリンガー、ブラウヒッチ、キルヒアイスが待っていた。皆、表情が硬い。おそらく命令が届いたのだろう。メックリンガーが近づいて通信文をこちらに差し出した。
「たった今、総司令部より入電しました」

表情だけでは無い、声も硬かった。黙って受け取ると視線を電文に落とす。
『十二時四十分を期して左翼部隊全兵力を挙げて直進、正面の敵を攻撃せよ』
フレーゲル男爵の話は本当だった。何処かで嘘である事を期待していた。あの男が嫌がらせをしたのだと……。ミュッケンベルガーは歴戦の軍人だ、兵の命の大切さは分かっているはずだ、それなのに……。改めて身体が震えた。

「閣下、これはどういう事でしょう。総司令部は何か戦術的な意味が有って言っているのでしょうか」
メックリンガーは有能な戦術家、戦略家だ。彼にとってこの命令は余りにも不可解なものなのだろう。ビッテンフェルト、ロイエンタール、ミッターマイヤーとの間に回線を開くように命じる。彼らにも話しておかなくてはならない。

スクリーンに三人の顔が映った。ロイエンタールが
『何事ですか、司令官閣下』
と問いかけてきた。俺の話を聞いて付いてきてくれるだろうか……。一瞬だが不安が起き、慌てて打ち消した。大丈夫だ、彼らを信じろ。

「総司令官より命令が来た。十二時四十分を期して左翼部隊全兵力を挙げて直進、正面の敵を攻撃せよ、との事だ」
俺の言葉に三人が押し黙った。この三人はコルプト大尉の件で俺と行動を共にしている。何が起きているのか分かったのだろう。

「メックリンガー准将、我々は中央部隊や右翼部隊の支援を期待する事は出来ない」
「では我々は敵軍よりも前に味方によって危地に陥れられることになります」
その通りだ、メックリンガー。我々には味方は居ない、独力で切り抜けなければならない。

「ミュッケンベルガー元帥は敵の手を使って私を排除し、その犠牲の元に勝利を収める気だ。余程に嫌われたらしい」
フレーゲル男爵と同じ事を言っている。思わず苦笑が漏れた。皆が呆れたような表情をしている。その表情がおかしく更に笑ってしまう。そんな俺を見てビッテンフェルトが口を開いた。

『ミュッケンベルガ
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