秋桜に月、朔に詠む想い
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持つ事は為政者にとって絶対。武を学ぶとは、心を鍛えるには最適である。例え直接的に人を殺さずとも、武の心得を持つ事で強大な力を律しきれる心力があると、少なくとも己の武を拠り所にしている者達には示せる。
「いつから?」
「街に居る時から。内緒で秋蘭さんに教えて貰ってたんだ……」
「何よ。ボクにくらい言ってくれたらいいじゃない」
「ご、ごめんね詠ちゃんっ! もうちょっと上達してから見せて……驚かせたくて」
次第に消え入る声音。
詠は、呆れた、と言わんばかりの盛大なため息を零した。
「秋斗、あんたがボクに言わなかった理由は?」
「……月光に乗れるのが月と一緒の時だけだからだ。さすがに月を乗せて兵達の前に出るわけにはいかないし、月光に乗れなければ黒麒麟としての姿を見せられない。どうにか“黒麒麟の相棒”と親交を深めようとした結果、月と一緒に鍛錬に行く事が最善だと思った。まだ、月光には認めて貰ってないけど。内緒にしてたのは……ごめん」
月に内緒にしておいてと頼まれれば、秋斗はそれを裏切るはずも無い。互いの利も一致していればより確実に。だが……
――月は一人で武を学ぶ事を決めて、あんたも一人で黒麒麟になれない事を悩んでた。ボクだって……皆を支えたいのに……
「……っ……ふん、バカ」
下らない事だと思う。でも、仲間外れにされたようで、詠は哀しかった。
いつもそうだ。秋斗は誰にも話さない。月が偶然、月光に乗ろうと苦悩している秋斗を見つけたからこうなった事は予想に容易い。
月にしても、変わろうと足掻いてどんどん前に進んで行く。
「ごめん。詠ちゃん」
そんな詠の気持ちを読み取ってか、月はもう一度ペコリと頭を下げた。
「ううん、いいの。でもあれよ? ボクに手伝える事があったらなんでも言ってよ、二人とも」
「ウチもやで。隠し事すんなーなんて言わへんけど、頼って欲しいのも確かや。兄やんは特にな」
「……ああ、分かった。黙っててごめんな、二人共」
秋斗の謝罪を受けて、詠は内心で呆れを零した。
――月は頼ってくれるかもしれない。けどきっとあんたは、それでも誰にも頼ろうとしないんでしょ? そういう奴だもん。
ジトリ、と秋斗の目を見やる。敵わないなぁ、といつもの言葉で受け流す秋斗はそれ以上何も言わない。
自分が我慢するか、どうしても駄目な時は前のように無理矢理聞き出して押し付けるしかないのだと再確認して、詠はため息を溶かした。
†
ぶすっとむくれているメイド服姿の少女が一人、秋斗の膝の上を陣取って背をもたれ掛けていた。まるでここは自分の場所だと言わんばかり。
月が行っていた武の鍛錬を知らされていなかった朔夜は拗ねていた。
秋斗に
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