秋桜に月、朔に詠む想い
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てもいいかと多寡を括って近づいたのが悪かった。弓は騎射用のモノを厩から拝借したから良かったが、着替えるのは練兵場の給湯部屋等でいつもしていた。
今の二人の姿を現代で言えば……ペアルックでデートしているようにしか見えない。
秋蘭との内密の鍛錬は夜であったから、人目に付かないようにと選んでいた服が尚、詠の不機嫌を煽っているようだ。
「あ、その……詠ちゃ――――」
「何処、行ってたの?」
「ちょ、ちょっと理由があって――――」
「月……?」
「へぅっ!」
朝帰りした娘を問い詰める母親のようだ……と秋斗は居た堪れない気持ちが湧いてきた。
固まってしまった月に、もうバラすしかないだろう、と言おうとして……詠に冷たい視線を投げられる。
「秋斗は黙ってなさい」
「あ、はい」
ぴしゃりと黒いオーラを纏って放たれた言葉に秋斗の身体も竦む。
詠の後ろでは、秋斗のそんな弱気な仕草が可笑しくて、必死で笑いを堪えている真桜が居た。
「……その……彼と一緒に森で……ゆ、弓の鍛錬を……」
「はぁ!? 月はそんな事しなくていいじゃない!」
「違うの! 戦場に出るわけじゃない! “彼女”も私をそうやって使うつもりじゃないの!」
「……じゃあなんで?」
「詠ちゃんは……武官の人に文官仕事なんか机に座ってやるだけなんだから簡単だろうって言われて、納得出来る?」
グッと言葉に詰まった。
国を動かすのがどれだけ大変かも分からないモノにそんな事言わせない、と言いかけた。
誰かから自分に対して、やってみろ、などと思わせない気なのだ。月は。
当然自分達はそれを言うつもりも、言うはずも無い。そんな誇り無き事を王足り得る者達はしない。
しかし……文官が武官を見下し、武官が文官を見下すような、そんな光景は何処にでもある。
努力を分からないモノは他者から簡単に貶められる。その逃げ道を塞ぐ為に、月は武の努力を是としたという事。
別段、取り合わなくとも良いモノではある。下らないと断じて一笑の元に伏せばいい。自分がしている事をやってみろ等と見下しながら頭の中に留めるモノ達は、一つの凝り固まった視点でしか物事が見えていないのだ。高い視点を以って、臣下達を公平に見なければならない王からすれば、そんな輩に取り合う事こそ無駄である。
勿論、正式な武官のように毎日鍛錬が出来るわけが無いのだが……人の努力の一端に触れる事でその言を封じる事は出来る。建築、農業、漁業……あらゆる分野に手を伸ばそう、などとは出来はしないが、武というモノは古くから王達の教育として奨励されているモノでもある。
言うなれば、王足るに相応しいと誰しもに認められるように、認めさせるように。
真桜と話していた事にも若干関連してもいる。
権力という力を
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