秋桜に月、朔に詠む想い
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敗、そこから派生して何が生まれるか、悪用される可能性については……華琳に仕えられたからこそ、そういった思考を持てたのかもしれないが。
小さく、嬉しそうな吐息を漏らした真桜は、手の中の部品をくるくると愛おしげに回しだした。
「兄やんは始めっから色々分かっとったみたいやで。やから投石器の改良案も新兵器の開発も進んで受けたみたいやし、華琳様も分かっててそれをせぇって言うたんやと思う」
「秋斗が?」
「せや。所詮兵器はヒトゴロシの道具って言うとった。案だけ出た新しい兵器も、ぜぇんぶ人をより沢山殺す為の道具って言い切りよった。でも……」
かちゃ、と部品を元の場所に戻して、真桜は悩ましく顔を顰めた。
「それでも使うって言うた兄やんは、心の底から嫌そうやった。『他の転用方法もあるし、応用すれば人の暮らしが便利になるモノばかりなんだけどな』って後に付け足して」
「そんな事言ってたの? 石飛ばすだけの道具なのに」
「あかんで詠。ウチも兄やんに同じ事突っ込んだけど、楽しそうに返されたわ。投石器の技術は改良して船に乗せたり、浜で使うだけでも漁業の幅が広がったりしないか、って。他にたくさん教えてもろたもんも、なんでもちょっといじるだけで人の暮らしを助けるもんに早変わりや」
「……朔夜が聞いたらまた膝の上で甘えそうな話だわ。どうやって『箱の中から欲しいモノを手に入れるか』だし。そっか……人を救うために全部利用したがるあいつらしい」
「にしし、ウチもびっくりしたで。兄やんが言うには全部繋がっとるんやと。人を殺す道具も人を生かすモノに出来る。人には創意工夫を凝らす頭があるから、心さえ暴力的にならなければいい方向に進めるんだ……なんて言いながら、それでも暴力的に使っちまうのが人だけどな、って言う。どんなモノでも、人を生かすモノが人を殺すモノに早変わりも出来るって。やから、兄やんは戦が起こらへん世の中にしたい華琳様と同じなんやなぁってよう分かるわ」
相変わらずあのバカは……と悪態を尽きながらも、詠は満足そうであった。のんびりと、真桜はまた部品の点検を進めて行く。
そんな二人の元に、ゆっくりと近付く影が二つ。
兵器の部品が積み上げられている為に、詠からは二人は見えず。歩いてくるのを確認出来た真桜は、
「くく、来たで、攫われたお姫様と少女に魅了されたバケモンが。いや……お姫様が黒に染められとるから逆か」
にやにやと先程のからかいを蒸し返した。
ため息を一つ落として部品の陰から出て、詠はじとっと秋斗と月の二人を見据えた。
対して二人は、いきなり現れた詠に驚愕し、月はその厳しい視線を受けてへぅっと口癖を漏らした。
「……何処行ってたのよ。ってか月、何その服?」
拙い、と思った時にはもう遅い。真桜くらいならバレ
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