秋桜に月、朔に詠む想い
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。今の秋斗を乗せようとはせず、あまつさえ、後ろ蹴りを喰らわせようとする始末。
馬の扱いに長けた霞でさえも乗せようとはせず、魏のモノたちの中でも乗る事が出来たのはただ一人……覇王のみ。その時は彼女にだけ、頭を垂れた。
華琳は月光を気に入ったが、さすがに絶影という名馬を相方としている為に自分のモノにはしなかった。
今回の戦の途中で記憶が戻るやもしれない、ならば月光を連れて行くべき……そう華琳が言って、華琳の命令は聞くようで、月光は大人しく此処まで連れて来られた。
それからも幾度となく乗せて貰おうと試した秋斗であったが……暴れる事は無いが乗せる事はしない。
黒麒麟の二つ名の由来である名馬に乗れないとあっては兵達が訝しむ。よって秋斗は、乗せて貰えるように、いつも暗くなってから月光に話しかけた。
そんな折だった。皆にも内緒にしていた月光との対話の場に、月が様子を見に来たのは。元々が馬の名産地で育った彼女ならばどうなのか。
月光は何故か華琳と同じく、月にも頭を垂れた。
そうして月のお願いだけは聞くようになり、彼は月と一緒に森で秘密の鍛錬を行うようになっている。
優しく首を撫でる月は、此処に乗せて貰うのは億劫であるのか、いつも哀しい表情を浮かべている。
「なぁ、ゆえゆえ」
「なんでしょうか?」
心地いい風が頬を撫でる中、秋斗に返す声は透き通っていた。
「こいつは黒麒麟に何を見てたんだろうな?」
背に跨り、問うてみた秋斗の声は暗い。自分では足りないと元相棒から跳ね除けられると、やはり心に来るモノがあった。動物からの拒絶は人からの拒絶よりも真っ直ぐに現実を教える。
自分で考えるべきだと分かっていても、少し、彼は誰かの答えも聞いてみたかった。
「……はっきりとは分かりません。でも、もしかしたらこの子は……」
――この子なりにあなたに教えているのかもしれません。“彼”がどういった人だったのか。
風と共に耳を打った言葉に、秋斗は思考を巡らせる。自分がどういった人だったか、華琳と月だけを乗せる理由にも。
月の答えを肯定するかのような嘶きが小さく上がる。
「……どうしても必要な時が来たら、すまんが例え今の俺でも乗せてくれな」
静かに流れた秋斗のお願い。
呆れたように鼻息が鳴った。人であれば、は……と息を付いているかのよう。乗せるかどうかは自分が決めると言わんばかり。
きっと乗せるんだろうな、と月は胸の内で呟いてクスリと苦笑を一つ。優しく首を撫でやった。
月光は誤魔化す為か、地を蹴る脚に力を込めた。
†
その場に居る工作兵の誰もが顔を蒼褪めさせていた。場を取り仕切る真桜でさえ、冷や汗を流して感嘆とは全く別種の吐息を、自分が
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