秋桜に月、朔に詠む想い
[17/17]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
家のみの舞台となるのは確定です」
「……さすがは朔夜」
くしゃくしゃと頭を撫でられるのがどうしようもなく嬉しくて、しかし抑えなければならないから、彼女はまた、掌を握る。
「えーりんとはどれくらい話してるんだ?」
「秋兄様の、最後の狙いまではお伝えしていません」
すっと目を細めた秋斗は思考に潜る。彼の冷たい瞳に宿る知性を磨くのは、今は自分の仕事だ、と朔夜は頬が緩まった。
「……えーりんにも言わない理由は……霞とゆえゆえか」
正解です。そう笑顔で告げて、朔夜は正対していた身体を表に向けた。
お茶が少し冷めていた。それでもおいしさは変わらない。秋斗も倣って、お茶で唇を潤した。
「曹孟徳に、その部下達に、ゆえゆえとえーりんにも、“俺”がどんなモノかを……示すってことか」
「客将という、立場を貫く以上は大切です。あなたは……記憶が戻らずとも華琳様には仕えない、単純に仕えるよりも有用な道が多々あります。だから、仕えない」
今度は秋斗が震える番。頭の中を覗かれた気がした。心臓に冷たい手を這わされるような感覚が襲う。
この少女は、やはり司馬仲達なのだと思い知らされた。
「……クク、敵わないなぁ」
「お互い様、です」
静かな午後の一室。二人は二人だけの未来を机上に広げていた。
彼の思考を縛る鎖はもはや無い。覇王を信じ、覇王の為になる事だけを積み上げていく。
朔夜は彼の狂信者として、彼の願いを叶える為にだけ、彼の思考を読み取って、全てを固めて行く。
「鳳統ちゃんはちゃんと動いてくれるかな?」
「必ず。内政に聡い荀ケが見逃すはずありませんし、鳳凰は“嘗ての秋兄様”がしたかった事をなぞって来るはずですから」
「なら、いいか」
黒瞳は哀しげに揺れ動く。自身が傷つけるのは誰になるのだろうかと怯えを含んで。
朔夜は何も言わない。優しい彼だと知っているから。彼が求めて仕方ないのが、彼女の幸福だと知っているから。
どうか……と、彼女が救われる事をも願った。
彼が彼女に出来る事は少ない。出来るのはせめて……
――あの子を黒麒麟のマガイモノの……“嘘つき”にさせない事くらいだ。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ