秋桜に月、朔に詠む想い
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図れる、と考えていたのに……秋斗はその上を容易く行く。
気付けば早い。秋斗が知識を持っているという事は、それは実在する力であり、自分達のこれから作る国に向けられるかもしれない脅威でもあるのだ。
震えた。心の芯まで。歓喜と恐怖に。
高鳴る胸は敬愛からか、それとも自分を受け止めてくれる異質なモノへの狂信からか、どちらもだろうと朔夜は思う。
「一歩間違えば……私達が侵略者になり果てますが……」
「大きくなれば大きくなる程に内部崩壊もあるし、勝ち続ける事なんざ出来ないよ。後に続く世代達が、同じ、もしくは似通った文化圏で満足出来なければ、俺達が足りなかったってこった。それにな、そういった強欲に対する返しの刃を、曹操殿も俺達も作ろうとしてるだろう?」
「愚問でした。申し訳ありません」
「クク、謝るな。お前は正しい。俺達が目指してるのは馬鹿げた理想だ。曹操殿も黒麒麟も俺も、でかすぎる夢に捉われちまったのさ」
否定しながらもそれを目指す彼は、朔夜の目に眩しく映る。
「……大陸内に於いては、あくまで同盟で終わらせるつもりは無い、と」
「元々一つに纏まってたもんを三つに分ける必要が何処にある? 権力者の分化は争いしか生み出さない。どうせいつかは一つになるんだ。遅いか早いかの違いでしかない」
「目に分かる崩壊と絶対的な新生……もし、華琳様が連合前に月姉さまの本質を知っていたらどうしていたでしょうか?」
優しい月を見てきたから出てきた言葉。華琳の思考に近しいであろう秋斗に、朔夜は聞いてみたかった。そんな“もしも”の可能性を。
「……踏み潰すだろうな。アレは覇王だ。手は繋がんよ。踏み台にして高みに上る。何より……ゆえゆえと曹操殿が勝っちまったら、他の勢力の頂点達は帝に刃を向けた反逆者として死ぬしかない。それだけは避けるだろうよ。ま、俺が曹操殿の立場なら、だが」
ああ、やっぱり……朔夜の心は震えた。
華琳も秋斗も、求めているモノが他とは違い過ぎた。だから誰にも理解されない。
記憶を失っていても、秋斗に仕えたいと思ったのは、決して間違いではなかったのだと確信した。
背中を預けていた身体を正対させる。じ……っと秋斗の黒い瞳を見つめた。
抱きついて自分の気持ちを言ってしまおうか、と一寸考えるも、朔夜は軍師としての思考を吐き出そうと、きゅむきゅむと己が手を握った。
「月姉さまは、あなたの記憶が戻らなくても侍女を辞めますよ、きっと」
「そっか……なら……袁家の次は馬家がいいな。この戦で、連合総大将の軍に力を貸すと思うか?」
「いえ、きっと貸さないでしょう。どちらに手を貸しても危うい。漢の忠臣という立場を、貫く以上は帝か二つの劉が動かない限り動けません。華琳様は帝の力には、絶対に頼りませんのでこの戦は私達と袁
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