秋桜に月、朔に詠む想い
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繰り越し、休憩の時間は楽しい絡繰り作りとかモノ作りでもしたらいいと思う」
全く意味が分からない、といった表情で固まった真桜に、尚も秋斗は続けて行く。
「新しい事をするのは楽しいだろ? 真桜は職人畑の人間だ。昏い兵器なんかを作ってるだけじゃお前さんも兵士達も心が歪む。人を楽しませて、人を笑顔にする道具をこれまでも作って来たんだから、部隊の奴等と一緒に、戦まで例え瞬刻だろうとその楽しい時間を教えてやったらいい。お前さんには店長と同じで、人を幸せにして笑顔にする力があるんだからさ。曹操殿に言われている基準値以外……戦に関しての戦略や戦術なんかは俺達に任せてくれ」
先程詠に頼ってくれと頼まれ、真桜からも諭されたというのに、彼は先手を打って真桜の心の負担を減らしに行く。
――ホンマ、よう分からん人やで。
心の中で零した。悪い気はしなかった。頼って欲しい、とは思わなかった。
詠ならばそう思うであろう。しかし真桜が出来る領分を越えているが故に、素直に受け止められる。
兵器の使い方で文句は無く、将として気遣ってもくれる。職人としての自分を認めた上で楽しみをくれて自分が見ていた道を照らし、悪戯などの楽しい事にも付き合ってくれる。尊敬できるかと言われれば眉根を寄せる部分もあるが、信頼できるかと問われれば間違いなく頷けた。
戦の事を話す冷たい秋斗は苦手だった。でも、幸せな時間を作る優しい秋斗は共に時間を過ごしたいと思える。
真桜にとって、やはり秋斗は不思議な男だった。
「……ん、了解や。材料はどうするん?」
「竹でもなんでも。別に休息日扱いでいいから森の視察にでも行って必要な分を拾って来たらいい。木の上に秘密基地とか作ってもいいぞ? 森って結構楽しいからさ」
「ははっ、なんやそりゃ……ホンマ、兄やんは子供やなぁ」
「クク、秘密基地は男のロマンだからな。今度俺も兵達を連れて作りに行くかね」
「そりゃあ、兄やんにも休みは必要やろしな。阿呆共も兄やんとはっちゃけるん好きな奴多いし、そうしいや」
「ありがとよ。じゃあ、練兵に戻ってくれ」
「あいよー。ほな、朔にゃんもまたなー」
ふりふりとにこやかに手を振る朔夜の姿を扉の陰に切り取り、パタリ、と静かに閉めた。
廊下を進む真桜は、ふと、此処に来る前に秋斗が苦しんで蹲った時を思い出す。
なんでもないの一点張りで、何も話そうとしない彼は身勝手だ。
記憶が戻る戻らないとは関係なく、誰にも頼ろうとしない在り方は見ていて痛々しい。
「やっぱりそういうとこも、華琳様と一緒なんよなぁ。ウチの事にしても、天和達にどうすればいいか示したんと似とるし」
春蘭の負傷報告の時、その場に居たのは真桜だった。人和から、人を戦場に扇動する理由を聞いた事もあった。
う
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