第二章
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第二章
「また来ますから」
「わかりました。それでは」
「はい、そういうことで」
こうしたやり取りをしてだった。そのうえでだ。
彼は夜のこの店に言った。するとだ。
雰囲気は同じ店だというのに全く違っていた。明るい店の中は夜の薄暗い灯りの中にあった。まるでその世界の中に浮かんでいる様にだ。
そしてその中のカウンターにだった。彼女がいた。
黒い露出の多いドレスを着て黒い髪を上にあげてだ。所々に艶やかなメイクを施した女がそこにいた。彼女はだ。忠志がカウンターに座るとだ。
穏やかな声でだ。こう彼に言ってきたのである。
「夜は暫くぶりですね」
「そうですね」
彼はカウンターに座ったうえで彼女の言葉に応えた。
「いつも昼に来てますから」
「そうですよね」
「それでなんですけれど」
彼はだ。カクテル、モスコミュールを頼んでからだ。その女に尋ねた。
「御伺いしたいことがあるんですけれど」
「何でしょうか」
「御昼の人ですけれど」
単刀直入にだ。彼女に尋ねたのだった。
身を少し、無意識のうちに乗り出してだ。そうしてだった。
「あの人って彼氏とかいますか?」
「彼氏ですか」
「はい、いますか?」
こう尋ねるのだった。
「そういう人は」
「いませんよ」
女はだ。その切れ長になっていて長い睫毛の瞳を微笑まさせてその問いに答えた。紅の唇もだ。実に艶やかである。色気そのものの顔だ。
その顔が微笑むとそれだけで心を奪われそうだ。しかし今の忠志はだ。彼女を見ずにだ。唯を見てだ、そのうえで話をするのだった。
「御一人です」
「そうですかいないんですね」
「はい、いません」
女は微笑みで言い切ってみせた。
「どなたもです」
「左様ですか。それでなのですが」
「それで?」
「あの人の好きなものは何でしょうか」
次に尋ねたのはだ。そのことだった。
「それと好きな花は」
「花もですか」
「出来れば。誕生石も」
そこまで尋ねるのだった。踏み込んでだ。
そのうえで尋ねる。するとだ。
女は一呼吸置いてからだ。こう彼に話した。
「まず好きなものはですね」
「はい、それは」
「食べ物だとケーキです」
それだと話す女だった。
「苺ケーキが好きです」
「苺のですか」
「はい、大好きなんですよ」
笑顔で忠志に話す。
「それと兎のぬいぐるみも好きでして」
「兎のですか」
「ぬいぐるみを集めるのが好きで」
女は今はにこりとして話す。その笑みはだ。
他者への微笑みではなかった。どちらかというとだ。
己に向けた様な笑みだった。その笑みでの言葉だった。
「その中でもです」
「兎ですか」
「そうなんですよ」
「兎ですか。わかりました」
「花は薔薇です
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