第十三章 聖国の世界扉
第二話 彼の軌跡
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紙を取り出した。
それは掌程度の大きさであり、窓から差し込む光を受け微かに光沢を見せる奇妙な紙であった。手に持ったそれを頭上に掲げると同時、ジェシカはそれをテーブルの上に叩きつけた。
バンっ! と、部屋全体が震えるような勢いでテーブルに叩きつけられた紙にルイズたちの視線が集中する。
「……」
「あらあらまあまあ」
「わ〜凄い。まるで生きてるみたい」
「……え? これって」
「何だいこりゃ? うわ凄い細かい絵だねぇ。睫毛の一本一本まで描かれているじゃないかい?」
「絵? ふ〜ん、ま、確かにこれだけ細かい絵は見たことないけど、で、これが一体何?」
ルイズたちがテーブルの周り囲み、置かれた絵を見下ろしながらそれぞれ感想を漏らす。全員がその絵のあまりの精緻さに驚きを顕にする中、キュルケが顔を上げジェシカに視線を向けた。キュルケの問いに、ジェシカは手を差し伸ばし、全員の注目を浴びている絵をこんこんと指先でつついた。
「いや〜それがね。これってシロウの部屋を掃除してたら床に落ちてるのも見つけて拾ってきたものなんだけど。何か所々違うけど、真ん中にいるのってシロウでしょ」
ジェシカが指差す先には、複数の女性の描かれた絵―――写真の中に映る唯一の男性の姿があった。写真の丁度真ん中に立つ男の両腕には、それぞれ十歳から十二歳頃の少女二人が抱きついていた。左腕は銀髪の美少女から、右腕は黒髪の美少女に抱きつかれ動きが封じられる立ち尽くす男の周りには、それぞれ趣の異なる美女が映っている。
テーブルの周りに集まったルイズたちは、顔を突き出し写真に映る困ったような引きつった笑顔を浮かべる男をじっと見つめていた。彼女たちの知る士郎とは、髪の色や肌の色以外にも細々とした点で相違が見られたが、写真越しからでも感じられるまとう雰囲気や浮かべている笑顔から、これは自分たちの知るエミヤシロウだと確信していた。
「まあ、確かに色々と違うわね。肌もそんなに黒くないし、髪も……赤みがかってるけど、ま、顔が一緒だし、直ぐにシロウだって分かるわね。なに? もしかして、それを確認したかっただけなの?」
キュルケが写真から顔を上げ、ジェシカに視線を投げる。ジェシカは軽く肩を竦めると、部屋をぐるりと見回し、丁度写真から顔を離したルイズで視線を止めた。
「違うわよ。わたしも直ぐにこれがシロウだって気付いたわよ。わたしが相談―――って言うか、聞きたいことって言うのは……シロウの過去のことよ」
「シロウの―――」
「―――過去?」
ジェシカの言葉を、ルイズたちの口からポロリと溢れる。零れ落ちた言葉を耳にしたジェシカが大きく頷く。
「その通り、シロウの過去よ。ねえ、素朴な疑問なんだけど、ここにいる人の中で、シロウが何処で生まれたとか知って
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