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剣の丘に花は咲く 
第十三章 聖国の世界扉
第二話 彼の軌跡
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キュルケとルイズの訝しげな視線を向けられたジェシカは、テーブルの上に置かれたケーキを一つを手で摘むと口の中に放り込んだ。

「んぐんぐ……ん……流石料理長秘蔵のブランデーを材料にしたと言うケーキ。ブランデーの良い香りにこの深い味わい……んん〜期待してただけはあるわ」
「っくくく、何だい何だい。もしかして、あんたの言う理由ってのは」 

 ロングビルが何やらニヤニヤと笑いながら視線を向けると、ジェシカはもぐもぐと口を動かしながらこくこくと頷いてみせた。

「―――ん、んぐ。んん。ふっふっふっ。いや〜実は料理長がシロウからお酒を使ったケーキの作り方を習ってるって噂を聞いてね。それで何やらその完成品とやらが今日出来上がると聞いたら、やっぱりどうしたって食べてみたいものが人情じゃない? 出来上がった直後に大事な会議のお茶請けに必要だと言えば、それも、シロウに係わる会議だと言えば、あの人情に厚い料理長のことよ。手に出来上がったばかりのケーキがあれば、内心はどうあれ渡してくれる可能性が高いでしょ。ま、賭けの要素が大きい大雑把な作戦とも言えないものだったけど、どうやらわたしはその賭けに勝ったらしいわね」
「ああ、道理で……マルトーさん泣いてるように見えたけど、あれ、本当に泣いてたんじゃ……」

 マルトーにお茶菓子が無いか訪ねた時、完成したばかりのケーキと自分を何度も見比べた後、震える手でケーキを差し出す彼が見せた表情を思いだし頬を引き吊らせるシエスタの手には、しかしちゃっかりと、マルトーから奪い取った彼渾身のケーキの欠片が突き刺さったフォークの姿があった。
 そんなメイド二人が滅多に食べれないご馳走を貪る姿をベッドの上で見ていたキュルケが、頭痛を堪えるように眉間を揉みほぐしながら呆れたような声を上げた。

「ねえ、ちょっともしかして、あんたただそのケーキとやらが食べたいからあたしたちを呼び出したわけじゃ……」
「……てへ」
「そう言えば、最近魔法の練習してなかったわね。わたしの魔法って、命中率が悪いのよ。せっかくだし、動く的でも使って練習しようかしら」
「ッッ?! ちょっ、ちょちょちょ―――ちょっと待って!? うそっ! うそですごめんなさいっ! 今のは冗談っ! ちょっとお茶目な冗談だから! 本当にシロウの事で相談したい事があるのよっ!」

 おもむろに杖を握り締めたルイズが、ゆらゆらと物騒なオーラを纏いながらゆっくりと近づいて来るのを見たジェシカは、両手と顔を高速に左右に振って見せた。

「―――相談事の内容は?」

 部屋に入ってからずっと本から目を離さなかったタバサが、パタンと本を閉じるとジェシカに問い掛けた。質問を投げかけられたジェシカは、予想外の人物からの問いかけに一瞬呆けるも、直ぐに我に返りいそいそと懐の中から小さな
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