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剣の丘に花は咲く 
第十三章 聖国の世界扉
第二話 彼の軌跡
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起きる前、今では朋友であり戦友でもある空中装甲騎士団(ルフトパンツァーリッター)との争いが切っ掛けで親しくなった黒髪清楚系一年生のブリジッタであった。
 顔を伏せながら、ブリジッタはスカートの端を掴み、子犬のように身体を小刻みに震わせている。

「そ、その、な、何故、どうして覗きなんて……」

 ブリジッタが顔を上げると、その大きな瞳は潤み、今にも涙がこぼれ落ちそうになっていた。苦しげにブリジッタの顔が歪むのを見たマリコルヌは、目を伏せると顔を前に戻す。ブリジッタに背中を向け、マリコルヌは青く晴れ渡った空を見上げた。

「……ブリジッタ、覚えておくといい……男、いや、漢とは、時としてどうしようもない程馬鹿になってしまうものなのさ」

 バッ、と勢い良く箒を振り上げ肩に担いだマリコルヌは、呆然と立ち尽くすブリジッタを置いて去っていく。その背には男の哀愁が漂い、容易に呼び止める事が出来ない雰囲気を醸し出していた。そんな漢の背中に、気弱な一年生女子が声を掛けることなど―――。

「単に人としてダメなだけじゃないですか!」
「おうふっ!」

 顔面から地面に倒れ込むマリコルヌ。鯱のように海老反り姿で地面に転がるマリコルヌの身体は、ピクピクと痙攣している。
 顔面から落ちたダメージがそれ程までに重かったのか? 
 否―――否である。
 マリコルヌ―――この漢、明らかに―――。

「ほ、ほお、ほおおぉぉぉ〜〜〜」
 
 悦んでいた。
 気味の悪い蟲のように蠢くマリコルヌを文字通り虫けらのように見下ろしながら、ブリジッタは吐き捨てるように言う。

「同じ人間だとも思いたくありません」
「ふおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

 どこぞの変態な仮面になりそうな勢いで叫ぶマリコルヌは、誰がどう見ても、どこに出しても恥ずかしい変態である。その余りの気色の悪さに、周囲で伺っていた他の生徒たちは誰もが動けずにいた。悲鳴さえ上げる事さえ出来ず、ただ呆然と見ているしかない中、そんな変態を―――。

「―――おおおぉぉぉッぶっ?!」
「やめんかこの馬鹿が」

 ―――止める者がいた。
 後頭部を踏みつけ強制的にマリコルヌ(変態)を停止させたのは、漆黒の鎧に赤い外套、浅黒い肌に白髪を持つ鋭い眼付きの男であった。水精霊騎士隊(ウンディーネ)隊長衛宮士郎である。

「貴様は掃除の一つも満足に出来んのか?」

 呆れた声で足元で蠢くマリコルヌに言い放った士郎は、後頭部に乗せていた足を外すとぽっこりとした腹を蹴り上げ仰向けに転がすと、その丸っこいお腹の上に手に持った拾い集めたゴミの塊を放り捨てた。
 
「ごみ捨てくらいは出来るだろ。ほら、さっさと行ってこい」

 マリコルヌを蹴り転がし追い払うと、士郎は傍で立ち
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