第十三章 聖国の世界扉
第二話 彼の軌跡
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な笑みを浮かべ士郎の腕に抱きついている。その姿だけとらえれば、微笑ましい光景なのだが、何故かどうしても何か如何わしい雰囲気が感じ取れてしまう。
「さあ? ま、確かに二人ともとんでもなく綺麗だけど、種類は大分違うわね。この銀髪の子の方は、何だか妖精みたいな儚げな美しさって感じだけど、こっちの黒髪の子は……う〜ん、何と言うか……蠱惑的、かしら?」
「蠱惑的って……でもそんな感じよね……だけど、この年頃の子の第一印象がそんなのって流石に……。確かにこの子、この年頃にしてみれば発育は良いみたいだけど、こっちの紫の髪の女性の方が、遥かに色っぽくて体付きも過ごのに……この子と比べると一歩劣るって感じがするのよね。なんでかしら?」
キュルケとジェシカが黒髪の少女から感じる年に合わない妖艶な雰囲気に対し、ああでもないこうでもないと言い合っていると、チラリと写真を一瞥したタバサが一言呟く。
「目」
「タバサ? なに? 目って」
耳ざとくタバサの声を拾ったキュルケが顔を向けると、タバサは再度写真へと視線を向ける。
「……目が違う」
「あの、それってどう言う―――」
端的過ぎる言葉に答えが分からずシエスタが困ったように眉根を寄せ、更に詳しくとタバサに説明を求めようとしたが、それを遮るようにキュルケたちの声が上がった。
「ああそう言うこと。この子、もう完全に女の目をしているわね」
「……それも相当やばい奴の目よこれ」
キュルケとジェシカが若干引きつった声で黒髪の少女の瞳を見た感想を上げる。
そして両者の見解は一致していた。
詰まるところ、『この黒髪の少女はなんかヤバイ』、である。
写真越しからでも『女』を感じさせる士郎を見る少女の目。無邪気に抱きついて見せているようで、その実ふくらみかけの胸をしっかりと押し付けている計算高さ。浮かべる笑みも何処か男を誘うような濡れた気配を漂わせている。
何の悪意も汚れも知らない清らかな乙女に見えるからこそ感じる異常。
しかしキュルケたちの意見に、少女の年齢からしてやはり納得がいかないのかシエスタは未だ納得できていなかった。
「えっと、やばい、ですか?」
奥歯にものが挟まったようなシエスタの物言いに、少女の目を見た事で、とある赤黒いトラウマじみた過去を思い出したジェシカが、眉間を強めに揉みほぐしながら苦々しい声を零す。
「……昔こんな目をした人を店で雇ってた事があるのよ。その経験から言わしてもらえば、こんな目をした女に禄な女はいないわ。これは男を破滅させる女の目よ」
その人もこの少女程ではなかったが十分以上に美人であった。女の職場である以上、美しさと言うのは武器にもなるが害を成すこともある。しかし三日もたたずその人は、客だけでなく従業員の
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