第十三章 聖国の世界扉
第二話 彼の軌跡
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学院の授業が終了した放課後。雲一つなく晴れ渡った空に輝く太陽は、中天から外れた位置にある。しかし、降り注ぐ日の光は未だ健在であり、青い空の下、魔法学院にある四つの中庭を照らしている。その中の一つ、アウストリの広場。そこには授業を終え、それぞれお気に入りの木陰やベンチで今後の予定や旬の話題に花開かせる生徒たちの姿があった。授業が終わった開放感と、親しい友人との会話に明るく暖かな空気が満ちるそんな広場に、何の前触れもなく闖入者が入ってきた。彼らは整然とした行進で広場中心に向かっている。その中には、ガチャガチャと重々しい音を響かせながら、甲冑を着た一目で歴戦の戦士と伺わせる気配を纏う騎士団に交じり、魔法学院の生徒らしい年若い少年の姿も見える。腕の振りどころか指先の動きまで完全に一致した、王宮の近衛隊の手本にでもしたくなる程に完璧なまでの行進を見せつけながら、彼らは広場の中心へと進む。
集団の先頭に立つ、とある騎士団の隊長であるカイゼル髭が雄々しい壮年の男が広場の中心に辿り着くと、集団の後方から絶叫が響いた。
「ぜんた〜いッ! 止まれッ!!」
ザッザッと、同じ場所一、二と足踏みをした集団が、完璧なまでに統率の取れた動きで停止する。まるで一つの生き物のように動きが一致していた。その芸術的なまでの行進の姿に、おしゃべりを忘れ魅入られたかのように視線を固定している生徒たち。
彼らの完璧なまでに美しい行進の根底には、互いに対する深い信頼と信用があってこそのものであった。共に戦場を駆け抜け、強固な絆を築いた男たちだからこそ取れた動き。そう、彼らはお互いに理解し合っていた。どんな性格の持ち主で、趣味は何か等と言った底の浅い関係などではない。好みの胸の大きさはミリ単位で、髪型は細かく数十種類まで、責められる際、精神的な方が良いか、それとも物理的なのが良いかまで。更に深い底にいる一部の者まで言えば、ア○ルの皺の数まで知っている輩もいる始末。理解というか、粘つき絡み合い、半ば融合している彼らの関係―――もはや恐怖である。
広場にいるそんな彼らの実態を知らない生徒達であったが、その一団が漂わせている雰囲気に敏感に感じ取ったのか、怖気付くように一歩、二歩と後ずさる者の姿が見える。生徒たちの注目を浴びる中、先頭に立つカイゼル髭の男が手に持った杖を頭上に掲げる。と、同時に集団の後方にいる小太りの少年が再度声を張り上げた。
「空中装甲騎士団及び水精霊騎士隊構えッ!!」
ひぅっ、と引きつった悲鳴があちこちから上がる。
痙攣のように小さな悲鳴が感染するように広場に広がる中、空中装甲騎士団と水精霊騎士隊の面々は、背中に背負ったモノを引き抜く。それは杖ではなく箒
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