魔石の時代
第三章
世界が終わるまで、あと――2
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いる?」
問いかけると、なのはは確認でも取るように一瞬だけリブロムに視線を動かす。だが、その魔導書は相変わらず僕らに対して一切の情報提供を拒んでおり、何も答えない。やはり僕らは信頼されていないと言う事だろう。
「……多分、そうだと思うんですけど」
結局、彼女は項垂れて言った。
彼女の兄については、まず誤解を解く必要があるだろう。それさえ出来れば、対立する必要はなくなるはずだ。この『世界』からジュエルシードを取り除きたいという目的は同じはずなのだから。もっとも、懸念はある。
「あの黒い少女については?」
彼女の魔法は、明らかに僕らと同じものだ。となれば、当然管理局の存在も知っている。……正しく理解しているはずだ。
「分かりません。あの子もジュエルシードを集めているみたいなんですけど……」
彼女が管理局の情報を歪曲して伝えているのか。何かしらの取引を交わしているのか。
それとも利害が一致しているのか。……あるいは、彼の事情を知って善意で協力しているのか。今の段階では判断できそうにない。ただ、いずれにせよ、彼と接触を取る必要があるだろう。だが、向こうは完全に僕らを敵だと判断している。危険を伴うのは明白だ。
(それは今さらだな。今さらそんな事を気にするのは馬鹿げている)
もはや危険を避けて通れるような段階にはない。何としてでもあの魔導師と接触する必要がある。例え一戦交える事となっても、だ。
(問題は、僕が彼を止められるかどうかだが……)
踏み抜かれた右腕が疼く。あれが彼の本気だったとは思えない。もちろん、僕自身もあれが本気だったと言う訳ではないが……だからといって、本気を出せば確実に勝てると思えるほどには自分は楽観的ではない。そして、何より脅威となるのは――
(戦闘になれば、御神光は確実に殺しに来る)
高町なのはに危害を加える可能性への警戒の表れなのだろうが……あの魔導師は確実に僕らを排除しようとする。つまり、次の戦闘は、文字通り命のやり取りとなるはずだ。
それもまた、避けては通れない事だろう。
(不測の事態とはこういうものだよな)
仮にあの時点で御神光の存在に事前に気づいていたとしても、過去の経歴まで調査できた訳もない。さらに言えば、あの状況で静観を選ぶと言う事はあり得ない。となればあの状況での接触もまた避けれず……悠長に事情を説明できる局面ではなかった以上、交戦を避ける事は困難だったと言わざるを得ない。部分的な反省点はもちろんあるが……それでも、全体を通して見れば起こるべくして起こった事態だと言うよりない。
(まぁ、今さら過ぎた事をとやかく言っても仕方がないんだが……)
あれほど厄介な……それでいて余計な面倒事を回避できたかもしれないという可能性にはさすがに未練の一つも覚えずにはいられないが――
(
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