魔石の時代
第三章
世界が終わるまで、あと――2
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つまり、ジェフリー・リブロムはその誰かを殺したという事だ。なのはが息を飲むのが分かった。もちろん、ブリッジにも先ほどとは別の意味で緊張が走る。
『分からねえのは、何で今さらそんなもんが目覚めたかだ。殺意を向けられていた奴はもうこの世にいねえ。なのに何だって蘇ってきたんだ?』
確かに、今の説明からすれば、対象となる相手がいない以上、蘇ってくるはずがない。
「新しく誰かを対象にしたとは考えられないのか?」
『あの代償ってのは、その由来からしてかなり特殊なもんだ。ちょっとやそっとの殺意で生じるようなもんじゃねえ。というより、原因となっているのは単純な殺意だけじゃないと言うべきだな』
「それが目覚めた原因はリブロム君にも分からないの?」
『まぁな。何せしばらく相棒と会ってねえしよ。まぁ、原因なんざ相棒自身が分かってりゃそれでいいんだけどよ。どうせ、解消する方法は知ってんだし』
それはそれで問題だった。殺人をみすみす見逃す訳にはいかない。しかし、御神光の身柄を拘束すれば解決する問題ではなさそうだ。その殺戮衝動とやらを解消しない事には根本的な解決には至らないようだが……正直なところ、人を殺さない限り解決しない問題に対する有効な対処法などまるで思いつかない。彼の暴走が感情によるものなら宥めることもできる。その殺意が理屈によるものなら説得もできるだろう。しかし、衝動は止められない。感情ですらないものを宥める事はできない。理屈ではないもの相手に理屈では対応できない。今のままでは――
(御神光か、それとも彼が狙い誰かか。どちらかを見捨てる事になる……)
その場合、より危険な御神光への『対応』を強化すべきなのではないか――人命を数で考えるような事はしたくないが……より多くを選ぶべきなのではないか。お世辞にも人道的とは言えない考えだが――しかし、それ以外の選択肢が本当に存在するのか。荒れ狂う御神光の姿を思い出せば、やはり不安を感じずにはいられない。
『オイ、チビ。やっぱりオマエは判断を誤ったと思うぞ。相棒を救うのに、コイツらは役に立たねえどころか足を引っ張りかねねえ』
その不安を見透かしたように、リブロムは言った。
『何故相棒が、オマエがコイツらと関わるのを嫌がったのかを……いや、違うな。今はもうそんな事を言ってる場合じゃねえ』
そうだろう。必要なのは、選択であり決断だ。それはなのはに限った話ではない。僕らにも同じことが言える。これから僕らはどんな対応をとるべきなのか。管理局の執務官として、最も最善の対応を決めなければならない。……僕自身が後悔しない決断を下さなければならない。
『オマエの望みは何か。どんな決断をして、どんな未来を選択するのか。それをもう一度よく考えるんだな。決して後悔する事のないように、良く考えるんだ。もっとも――』
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