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その魂に祝福を
魔石の時代
第三章
世界が終わるまで、あと――2
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覚ましつつある。
 正直に言えば、リブロムの言葉を僕は信じていなかった。そもそも気にも止めていなかった。……今、この時までは。だが、この光景を見てしまえば、納得せざるを得ない。深淵のような魔力を纏い、無数の暴走体を一方的に殺していくそれは、ヒトの形をした化物以外の何ものでもない。
 これでまだ不完全だと言うのであれば――完全に目覚める前に、対処する必要がある。下手をすればジュエルシードよりも危険だ。……いや、この怪物がいる以上、ジュエルシードも捨て置けない。何故なら――
(もし。もしもだ……)
 我ながら恐ろしい想像をする。それは分かっていたが。呻くように続ける。
(この怪物がジュエルシードを手に入れ……飲み込まれて暴走体となったらどうなる?)
 ごく普通の動植物でさえ脅威となる。だが、あのロストロギアは特に人間の願いにこそ強く反応するのだ。事実、高町なのはのデバイスから回収した交戦記録には、魔導師でもない子どもが発動させた結果、巨大な樹が街中に生じたという事実が残されていた。
 この魔導師がジュエルシードを発動させたなら、世界さえも滅ぼす怪物にすらなりかねない。それは、決して過剰な予想ではないはずだ。何せ相手は現時点でも制御困難な怪物なのだ。それ以上のものに化けた場合、アースラの戦力だけで対応するのは大よそ絶望的だった。犠牲者が出るのはまず避けられない……それどころか、最悪は全滅の可能性すらある。この場にいる誰もがその恐怖を覚えているに違いない。嫌な沈黙が、ブリッジを支配していた。
『オイオイ……。何だってあんなに急激に進行してるんだ?』
 そんな中で、突如としてリブロムが呻いた。その声は明らかに動揺――あるいは、恐怖すら宿している。ただ事ではないのは明らかだった。
「リ、リブロム君……急にどうしたの?」
 怯えたように、なのはが問いかける。
『急にって……。右腕を見りゃ分かるだろ。すでに完全に浸蝕されてやがる。あれじゃまんまリブロムの腕じゃねえか』
「え? ……ええ?」
 右腕を見ろと言われても。なのはの困惑は手に取るように分かった。何故なら、御神光の右腕には特に目立った変化は見られないのだから。精々が巻き付けられた包帯が青白い輝きを放っているくらいか。それに、
「リ、リブロム君の腕ってどういう事なの?」
 そうだ。リブロムに腕などある訳がない。何せそれは本なのだから。
『いや、だから……面倒くせえな。元々リブロムっつうのは相棒に魔法の力を与えた奴の名前なんだ。ジェフリー・リブロムってな』
 当然と言えば当然なのだが、聞き覚えのない名前だった。
「光お兄ちゃんの、魔法の先生ってこと?」
『そう思ってくれていい。実際、相棒はソイツの事を恩師って呼ぶしな。で、ソイツは特殊な代償を抱えていてな。殺戮衝動ってんだが、どうや
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