下忍編
血継限界
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里を襲えと命令され、霧の里から出てきた二人を襲った。
そして、二人に完敗した。
白にはぎりぎりの接戦で勝ったけれども、再不斬には負けてしまった。
殺されるのだと、そう思ったのに、なのに二人は生かしてくれた。有用な道具になるからと、彼らは傍に居ることを許してくれた。彼等は生きることを許してくれた。
その時初めて、彼は愛されている自分という存在があることを知った。檻の中に入れられて、誰にも触れさせないように閉じ込められて、戦闘兵器として戦う自分しかいないと思っていた彼には、とてもそれが衝撃的で、それ以上に、嬉しくてたまらなかった。
子供であるながらも一族全員誰もが恐れ、逃げてしまうほどの強さを持った彼を、誰も見なかった。
彼の強さは一族全員が抱えている戦闘本能ではなく、殺戮本能でもなく、何かを守ろうと思って発揮されていることなど、誰も見なかったのに、見ようとすらしなかったのに、彼等だけは振り向いて、そして両目を見開いて、その暖かい瞳で見てくれた。
だから、少年にとって、彼らが生きる意味となってしまった。
ぽつりと、少年が名前をこぼす。
彼らが呼んでくれた、生きていいと言ってくれた『少年』の名前を言う。
「僕の名前は、君麻呂…」
けれど、そこで彼は戸惑うように言葉を詰まらせる。きっと、知られたくないことなんだろうと思いながらも、カトナは促すように頷く。
それに安心したように、彼は息をつき、名前を告げた。
「かぐや、君麻呂だ」
カトナは知らない。
君麻呂が再不斬の仲間であることを。
君麻呂の生まれた一族『かぐや一族』が霧の里を襲撃し、唯一の生き残りが、今、目の前にいる少年であることを。
まだ、幼く若いカトナは、知らなかった。
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