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絵に出てる
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第一章

                      絵に出てる
 田所雄一郎は高校で美術部に所属している。そこでいつも絵を描いている。
 それを見てだ。部員達は言うのであった。
「彫刻とかはしないのね」
「そういうのは」
「うん、絵が好きだからね」
 彼はこう他の部員達に返す。
「僕はこれだけでいいよ」
「そう言うのならいいけれどね」
「それはね」
 部員達もそれは納得した。しかしである。
 彼が描いていくその絵を見てだ。苦笑いと共にこう言うのであった。
「あのさ、それでもさ」
「最近あんたの描く絵って」
「そうよね。同じっていうか」
「人物画ばかりじゃない」
「水彩画でも油絵でも」
 どちらでも描くのである。
「人ばかり描いてるけれど」
「何、それ」
「それもね」
「えっ、何かある?」
 彼は今も絵を描いている。見れば確かに人を描いている。その人は。
 茶色の縮れた髪を伸ばしている。目は垂れ目で優しい感じだ。色白で溢れる様な笑顔をしている。八重歯が歯から漏れている。少女である。年齢は高校生位だ。
 服は私服だ。この高校は男子は七つボタンの黒の詰襟で女子は青いネクタイと赤いブレザー、それに緑と白、それに赤のタートンチェックのミニスカートである。そうした制服だ。
 その少女を描いているのだ。そしてだ。
 見れば他の絵もだ。
 どれもこれも同じだ。白く垂れ目の女の子、髪は黒髪だったり茶色だったりするし長かったり短かったりする。それに私服は様々で制服のものもある。
 ところがだ。その少女はどれも同じであった。
「これ、あの娘だろ」
「間中理沙さんでしょ?」
「テニス部の」
「そうじゃないの?」
「えっ、そ、それは」
 その名前が出るとだ。雄一郎の筆が震えた。それで絵が乱れかけた。
 だがそれを何とか抑えてだ。彼は言うのだった。美術部員にしてはやけに筋肉質の背の高い身体も濃い眉と彫のあるバタ臭い感じの顔も表情が強張っている。丁寧に整えた黒髪も乱れている。
 その彼がだ。言うのだった。
「何でもないよ」
「ないって?」
「そう言うの?」
「本当に?」
「そうだよ、何もないよ」
 こう言うのである。
「この絵の人だよね」
「だからそれ間中さんだろ」
「あの娘じゃない」
「間違いなくな」
「違う?」
「だから違うって」
 本人はまだ言う。
「何処がそう見えるんだよ」
「どっからどう見てもなあ」
「その垂れ目がな」
「どう見ても」
「そうよね」
 ところがだった。皆言うのであった。
「しかも最近の絵全部同じだし」
「半年程前からね」
「だよねえ」
「だから濡れ衣だって」
 しかしだった。雄一郎はまだ言う。
「そんなことないから」
「まだ言う?」
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