第1章 双子の兄妹
1-3 初めての感覚
初めての感覚
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日部活に行けばいい」
「ケン兄は?」
「俺は走って行く。自主トレにもなるし」
「いいの? ケン兄」
「気にするなって」ケンジはマユミに顔を向けて笑った。
マユミは立ち止まり、ケンジの笑顔を見つめた。「ご、ごめんね、ケン兄」
そう呟きながらマユミは自分の胸が少しずつ熱くなっていくのを感じていた。
その夜、マユミはベッドの端に腰を下ろし、美穂が貸してくれた本をバッグから取り出した。
その表紙には、頬を寄せ合い、幸せそうに微笑む兄妹らしい男女のイラストが描かれていた。
マユミはそっとそのページをめくった。
本の真ん中辺りに、一ページ全部を使って描かれた挿絵があった。それは主人公の兄妹が、一糸纏わぬ姿で身体を重ね合って貪るようにキスをしているイラストだった。
マユミの顔がかっと熱を帯びた。
彼女は見開きのもう一方のページに書かれている文章を目で追った。
『昌広は、全身に汗を光らせ、激しく身体を揺さぶっていた。妹の恭子は、兄の背にきつく腕を巻きつけたままで、同じように身体を揺すり、甘い喘ぎ声を上げた。』
ごくり、とマユミは唾を飲み込んだ。
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『出る、出る、イくっ、恭子っ! 兄の昌広が叫び、身体を硬直させた。 どくんどくん…… 彼の身体から白く熱い想いが妹の中に注がれた。 マサ兄ーっ 恭子も叫び、愛しい兄の身体をさらに強く抱きしめた』
マユミの鼓動は最高に速く、大きくなっていた。
「(『白く熱い想い』って、精液の事……だよね)」
マユミは、本を閉じ、ベッドの枕元に置いて、ごろんと横になり、焦ったように灯りを消して、ケットを頭からかぶってしまった。
◆
8月2日。水曜日。
マユミが朝、起きて食卓に就いた時、横にいつもいるはずのケンジはすでにいなかった。
「今日、電話して自転車屋さんに来てもらうから」
母親がテーブルにごはんをよそった茶碗を運んできて、マユミの前に置きながら言った。
「うん。ありがとうママ」
「ケンジの自転車、あんた乗れるの?」
「うん。サドル下げてもらってるから」
「優しいお兄ちゃんで良かったわね」
母親はマユミの向かいに座って、たくあんを一切れ箸でつまみ上げた。
ケンジの自転車は、やはり少し勝手が違っていた。マユミはその細身の硬いサドルに跨がって、恐る恐るペダルを踏み込んだ。ふらつきながら彼女は自分の高校への道を辿った。
郵便局の前の歩道を進んでいた時、前に小さな幼稚園児の列が伸びているのに気づいて、マユミは道路側に自転車を寄せた。そこには黄色い点字ブロックがずっと続いていて、園児たちから距離を取ろうとすると、自ずとその上を走らなければならなかった。
園児の列を追い越してしま
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