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【SAO】シンガーソング・オンライン
シンガーの辿り着く先
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スキル?・・・何だそれ」
「ヘ?・・・・・・あー、もしかしてオイラの攻略本読んでない?」
「レベリングの時に一回読み返しただけだな。スキルとかよく分からないから片手剣と生産系だけ入れてるけど」

知り合いに頭を抱えられた。
事態がイマイチ掴めないのだが、そもそも俺は安全圏内で歌うことが仕事みたいなものなのでスキルなんて必要ないものと思っていた。
呆れ果てた知り合いはまるで出来の悪い子を諭すように説明する。ゲームに関して未だ不勉強な俺は、大人しく話に耳を傾けることにした。

「あのナ、楽器演奏スキルっていうのはそのまま楽器演奏の補助をしてくれるスキルなんダ!そのギターみたいなのを弾くときにスキルが発動しテ、成功すれば演奏が上手くいくよう補正がかかることになってるんだヨ!!」
「うわ、インチキ臭いスキルだなぁ」
「えぇー!?何なんだコイツ、変態ダ!!」
「酷いこと言うなぁ・・・」

だって、実際には上手くないのに上手く聞こえるなんて、録音した歌を流して本人が口パクしているようなものじゃないか――と思ったのだが、どうも俺と知り合いとでは価値観が大きく違うらしい。

話を聞くと、演奏スキルがあれば楽器演奏の下手くそな人でも適当に指を動かしてればイメージ通りの演奏ができるようになるそうだ。
つまり、今までの俺は弦を弾く動きを最初から最後まで自分の意思で動かしていたから演奏になっていたのであって、それが余りにも淀みないから知り合いは俺がスキルを持っているものと勘違いしていたらしい。

「まったク、楽器の演奏を全部手動でやってる奴なんて初めて見たゾ!?・・・よくそんな面倒なことやってられるナ?」
「そう言われても・・・現実世界じゃこれが普通だろ。お前、知らないうちにゲームに毒されてんな」
「ウグッ!?」

その言葉が想像以上に応えたのか、知り合いは齧ったパンを喉に詰まらせたように呻いた。
実際には詰まってないのだが。
食べ物がのどに詰まらない世界というのも変な話だ。だがそういう面倒なことの多くは、このアインクラッドでは簡略化されている。

それが何となく、俺には嫌だった。
簡略化は簡単だろう。
でもそれは現実世界に戻れば使えない。
俺自身、そんな気味の悪いスキルに頼って上手くなんてなりたくない。
そう言うと、知り合いは深いため息をついた。

「スキル持ってたら間違いなく熟練度カンストしてたろうにナ〜・・・他の連中がお前の演奏を聞きたがる理由が分かったゾ」
「なんだそりゃ?」
「スキルはより上手いと思われる方に音を補正していク。だからその分悪く言えばリズムや音の強弱が画一的になりやすイ。でもお前さんは全部手動入力だからプログラム的には排除される筈の揺らぎや微妙な力加減の強弱があル。つまり――」
「つまり?
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