第七章
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第七章
「だから。その」
「それはわかったがな」
「ええ。何?」
「御前積極的だったんだな」
京介はまだベッドの中に寝ている小真に顔を向けてだ。そのうえで言ったのだった。
「可愛い顔してな」
「か、可愛い?」
「おっと、しまった」
言ってから気付いた彼だった。
「言ってしまったか」
「はっきり言ったわよ。まああんたもね」
「俺も?」
「悔しいけれど認めてあげるわよ」
言葉は素直でないことからはじまるのだった。
「あんたもね」
「俺もか」
「結構格好いいわよ。それは認めてあげるわ」
「そうか」
「そうよ。感謝しなさい」
「御前感謝って言葉好きだな」
「することもされることも好きよ。とにかくね」
小真はここではやや強引に話した。そしてだった。また京介に言った。
「今度は私が上になるから」
「そうか。しかしな」
「しかし?今度は何よ」
「御前胸ないからな」
これは前からわかっていたことだが今日あらためて認識したことだった。小真はとにかく胸がないのだ。所謂貧乳であるのだ。
「上になってもらっても下から揉むとかはな」
「それは言わないでよっ」
急に怒った顔になってそれで抗議した小真だった。
「今度言ったら許さないからね」
「やれやれだな。全く」
「胸が大きいからって何よ。そんなのはね」
「ああ、わかったわかった」
京介もこれ以上は言わなかった。それでだった。あらためて小真に言うのだった。
「それじゃあ今度はな」
「ええ、私が上になるから」
こう話してだった。そのうえでまた肌を重ねる二人だった。そしてその次の日の朝。顔を見合わせた二人はだ。
いつもはいきなり喧嘩になるのにだ。お互い頬を赤らめさせて。こう言い合うのだった。
「あ、相変わらずチビだな」
「あんたこと。無駄に大きいわね」
こう言ってだった。それで終わらせるのだった。
そしてだ。それで別れる。この事態に驚いたのは周りだった。
「何だありゃ」
「どういう風の吹き回しなんだ?」
「いつも顔を見合わせたら喧嘩するのに」
「これって」
皆そんな二人を見て唖然となっている。しかしだ。
何はともあれこの日から二人はこれといって喧嘩をしなくなった。そしてだ。ここから十年後にこの二人は結婚してしまった。その時の二人を知る面々が富士山の噴火が起こった時よりも驚いたことは言うまでもない。
憎まれ口 完
2010・10・26
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