第六章
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第六章
「本当に」
「やれやれだな。しかしな」
「しかし?」
「仕方ないか」
達観した言葉だった。
「これもな」
「あのね。感謝しなさいよ」
「何で感謝するんだ」
「女の子のはじめての相手って」
京介を見ながらだ。言葉を何度かとぎらせながら話すのだった。
「そうそう簡単に選ばれないんだから」
「それはこっちもだよ」
「そっちもって?」
「男だってそうなんだよ」
こう言う京介だった。
「それだけ言っておくからな」
「そうだったの」
「まあそうだな。晩御飯は美味しかったな」
小真から顔を背けさせているのはこの時も同じだった。
「充分な」
「そうなのね」
「それに」
「それに?」
「可愛かったか」
こうも言うのだった。
「それは認めてやってもいいな」
「別に認めてもらいたくないわよ」
「そうか」
「そうよ。まあそれでも悪い気はしないわ」
小真も寝たまま顔を彼から背けさせている。そのうえでの言葉だった。
「お料理を褒めてくれたのはね」
「そうなんだな」
「それに可愛いって言葉も」
今度はこのことについて言う彼女だった。
「認めてあげるわよ」
「それはどうもな」
「だからよ」
ベッドの中からそっと手を出してきた。白く小さな手をだ。
「ねえ」
「何だ、今度は」
「まだ帰らなくていいのよね」
こう言いながらだ。京介のその手を掴んできた。
そのうえでだ。彼に言った。
「ねえ」
「何だ、それで」
「もう一回いいから」
自分から誘った彼女だった。
「許してあげるわよ」
「もう一回か」
「じゃあ何度でもいいわよ。好きなだけね」
「好きなだけか」
「相手してあげるわ。感謝しなさいよ」
「誰が感謝するか」
「そう、嫌ならいいけれど」
またいつものやり取りになっていた。しかしだった。
京介はだ。こう彼女に言った。
「嫌でも何でもな」
「何よ」
「感謝してやるよ。それでいいんだな」
「え、ええ」
京介の今の言葉は予想していなくてだ。戸惑いを見せた小真だった。
そしてだ。戸惑ったままこう彼に言うのだった。
「ま、まあ。そうね」
「今度は何だよ」
「さっきはずっとあんたが上だったじゃない」
「それがどうしたんだよ」
「たまには私が上になってもいいじゃない」
「何でそんなこと知ってるんだよ」
京介は眉を顰めさせて小真に言い返した。
「御前がよ」
「こんなこと誰だって知ってるわよ」
「女の子でもか?」
「女の子でも男の子でも知ってるわよ」
「そうなのか」
「そうよ。女の子だって興味ある話なんだから」
そうだとだ。彼にありのまま話すのだった。
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