第五章
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第五章
「家に誰もいないのよ」
「親父さんもお袋さんもか」
「そうよ。どっちも仕事でね」
「そういや御前のところ共働きだったな」
「それでよ。だからね」
「ああ。だから」
「お家で晩御飯位どうなのよ」
こう京介に言うのであった。
「たまたま作り過ぎたから」
「それでか」
「そうよ。嫌なら別にいいけれどね」
またこんなことを言う小真だった。
「どうなのよ」
「そうだな。俺もたまたまな」
「たまたま?」
「今予定が変わったよ」
携帯を出してだ。何時の間にかメールを送っていた。その返信を見ながらの言葉である。
「よかったな」
「変わったの」
「そうだよ、変わったよ」
そうだというのだ。
「親はまだ帰ってくるなって言ってるさ」
「遅くなるって連絡したんじゃないの?」
「さてな」
「まあいいわ。じゃあたまたまね」
「ああ、たまたまな」
「御馳走してあげるわよ」
こうしてだった。京介は小真の家に案内されたのだった。そしてだ。
二人で小真の部屋の中にいた。しかも横に並んでだ。彼はベッドの中で隣にいる彼女に対してこう言ったのであった。
「何かな」
「何よ」
「ここまでなるなんてな」
身体を半分起こしてそのうえでその小真に言うのだった。上半身は裸である。横にいる小真もベッドの中から見える肩は素肌である。色が白い。
「思わなかったんだがな」
「私もよ」
「そっちもか」
「御礼は御飯で終わるつもりだったわよ」
「何でこうなったんだ」
京介は考える顔になって呟いた。小真の部屋の中は暗い。しかし目が慣れてきたせいでだ。その部屋の中は結構見えていた。
如何にも女の子のものというアクセサリーやぬいぐるみがあちこちにある小奇麗な部屋の中を目だけで見回しながらだ。京介はまた言った。
「御前なんかとな」
「あのね、言っておくけれどね」
小真はベッドの中に寝たまま彼に言い返した。
「私なんかね」
「何だっていうんだ」
「はじめてだったのよ」
ここで頬が赤くなった。暗がりの中でもよくわかるまでにだ。
「言っておくけれどね」
「俺もだよ」
だが、だった。京介もこう言うのだった。
「俺もそうだったんだよ」
「あんたもって」
「全く。はじめてがこんな奴なんてな」
「何よ、嫌なの?」
「全くな」
いささかうんざりとした顔で右手でその顔を半ば覆っての言葉だった。
「どういうことなんだか」
「それはこっちの台詞よ」
「御前のか」
「そうよ。何でなのよ」
また言う小真だった
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