下忍編
試練
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思いながらも、サクラの足は動かない、動けない。
恐怖で動かない?
―いや、違う。
彼女が動かなかったのはほかでもなく、
「先生、ださい」
「水遁使いの前で水に潜るか、普通」
彼女の仲間が立ち上がったから。
それだけで、彼女は湧き上がる恐怖を押し殺し、震える体を止まらせ、苦無を構える。
「…二人とも、がんばって!」
カトナはその応援の言葉に「当然」と言い放ち、サスケはひらひらと手を振りかえす。
余裕綽々。
目の前で、再不斬の水分身が作られる。
けれどカトナは、サスケに軽い調子で話しかける。
「サスケ、水分身はあげるから、あの大太刀持ってる本物ほしい」
「…はっ、水分身一体と本気の彼奴じゃ、天秤があわないだろうが」
その軽い言葉に、再不斬は少しだけ目を細める。再不斬の殺気に怯えていないわけではない、その証拠に、再不斬が真ん中にいたのに、反応が遅かった。あれはどう考えても殺気に体が竦んだからだろう。
ならば、何故、彼らは今、自分に立ち向かおうとして来る…?
疑問に首をかしげた再不斬を視界の端で見たカカシは、必死に声を上げる。
「お前等! さっさといけ!! この任務はタズナさんを守ることだ! 俺なら大丈夫だから、いいからいっ」
「仲間を見捨てる奴は屑だ」
カカシの耳を、その言葉が貫く。
カトナはまるでそれが当たり前の様に言い放った後、背中に背負っていた鞘を、再不斬の眼前に晒すように胸元に抱え、そして、抜く。
銀色の刃が、鈍い光を浴びて、その場に降臨する。
カトナは大太刀をもちあげ、その切っ先を再不斬に突き付ける。
「じゃあ、先に水分身やった方が、あっちもやれるってことで」
「…言ってくれるなぁ、おい」
再不斬の見下すような目が、興味を持ったような目に変わる。自分と同じ大太刀を扱う、まだ下忍の子供を、彼は興味深げに眺める。
「ガキが。いきがるなよ」
「子供の成長って速いんだぜ、おっさん」
サスケが挑発し、その目が赤く光る。
それを見た再不斬が、カカシの写輪眼と同じものであるという事に気が付くより先に、カトナの大太刀が無造作に、地面にたたきつけられる。
がんっと、叩きつけられた大太刀の切っ先は地面に食い込み、そして、その衝撃は水分身の再不斬の元にまで亀裂を作り、一瞬だが動きを停止させた。
「すたーと」
その瞬間を見逃さず、彼らは飛び掛った。
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