第1章 双子の兄妹
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兄妹
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そんな事したら、いっぺんに嫌われちまうじゃないか」
「そんな冷静な判断ができるの?」
「た、確かにその時になったら、どんな行動に出るか……わからないけど……、でももしやっちまった、って思ったら、俺ならきっと速攻で謝る」
顔を真っ赤にして、必死で訴えるように真剣な顔をしている目の前のその兄を見て、マユミはほっとしたように小さなため息をつき、柔らかく微笑んだ。
「ケン兄優しいからね。きっとそうだね」そしてカップを口に運んだ。
「その先輩とは、別れたのか?」
「うん。もう会わないってメールした」
「で、そいつは諦めたのか? おまえを」
「それからメールもこないし、学校ですれ違っても何もない」
「そうか……」ケンジも冷めてぬるくなった紅茶を口にした。
「しばらくは、そんな時ちらっとあたしを見て、申し訳なさそうな顔をして目をそらしてた」
「後悔してるんだな、そいつも。きっと突っ走り過ぎた、って思ってるんじゃないか?」
「そうだね。たぶん……」
「だけど、謝って、またつき合い続けたい、って言ってきたわけじゃないんだな」
「そこまであたしの事、思ってくれてたわけじゃなかったんだよ、きっと。先輩もあたしの事を彼女だってあんまり意識してなかったんじゃないかな」
ケンジは肩をすくめた。「なるほどな……」
「ごちそうさま。ケン兄、ありがとうね」
マユミはすっきりした顔でにっこり笑うと、カップをトレイに戻した。「何だか気が晴れた。こんな話聞いてくれる男子って、考えてみればケン兄しかいないね。ほんとにありがと」
「気にするな」ケンジも少しこわばったような微笑みを返した。
「やっぱりさ、つき合うにしても、まずこうやって直接いっぱい話さなきゃだめだね。メールなんかじゃだめだよ、うん」
マユミは自分を納得させるように言ってトレイに手を掛けた。
「ま、また何かもらったりしたら誘うから」
「嬉しい。期待してる」マユミはウィンクをした。
ケンジはどきりとした。そしてますます目の前の、そのある意味無防備な態度の妹に対する想いの温度が上がっていく感じがした。
「じゃあ片付けるね」
「いや、俺が片付けるよ」
「あたしがやらなきゃ。ごちそうになったんだもの」
「おまえ勉強の途中だろ。俺に任せろ。時々こういう事をしとけば母さんに好印象だろ」
マユミは笑った。「そういう事かー。じゃあ、お願い」
マユミと一緒に立ち上がって、ケンジは彼女を隣の部屋まで送った。マユミの身体からほんのりとバニラの香りがした。そしてほのかな彼女の体温を感じてケンジはまた鼓動を速くした。
「ケン兄が彼氏だったら、素敵だろうな」
マユミは屈託のない笑顔でそう言って部屋の中に消えた。
部屋に戻ったケンジは、マユミが座ってい
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