第1章 双子の兄妹
1-2 兄妹
兄妹
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妹が」
横で肉じゃがの人参を箸で持ち上げながら、父親が無言のままちらりと目を上げた。
「べ、別に心配ってわけじゃ……」ケンジは茶碗のごはんを口に掻き込んだ。
「たまには慰めてやったらどうだ? ケンジ」父親が言った。
「そうね、兄妹なんだし」母親も言った。
「ごっそさん」
ケンジは食器を持って立ち上がった。
夕食を済ませた後、ケンジは自分の部屋で宿題を始めたが、なかなか集中できずにペンを置いた。そして小さなため息をついた後、立ち上がり、部屋を出た。
彼は、隣のマユミの部屋のドアをノックした。
「マユ、いるか?」
「あ、ケン兄、どうしたの?」
「開けるぞ」
ドアを開けると女の子特有の甘い香りがケンジの鼻をくすぐった。マユミは机に向かっていた顔を兄に向け直した。
「あ、あのさ、おまえの好きなチョコレートがあるんだ。部屋に来ないか?」
「ほんとに?」マユミは椅子から立ち上がった。しかし、すぐに怪訝な顔をした。「って、どうして?」
「どうして、って……」ケンジは一瞬言葉に詰まった。「いいから、来いよ」
「う、うん」
ケンジの部屋に入ったマユミが躊躇いがちに言った。「あたし、お茶淹れてくる。ケン兄、何がいい?」
「え? あ、ああ、俺コーヒーが……い、いや、マユに合わせる。何でもいい」
「じゃあ紅茶でもいい?」
「ああ。いいぞ」ケンジはぎこちなくもにっこりと笑った。
マユミはドアを出た。
ケンジの部屋のカーペットに座って、二つのカップにティーポットから紅茶を注ぎながらマユミは訊ねた。「ほんとに紅茶で良かった? ケン兄」
「いいよ」
「珍しいね、ケン兄がお茶に誘ってくれるなんて」
「い、いや、チョコレートもらったから。おまえ好きだろ?」
「いいの? 誰からもらったの?」
「友だちだよ」
「女の子?」
ケンジはカップを手に取った。「ま、まあな」
「えー。いいのかな、あたしが食べても」
「遠慮するなよ。俺がもらったんだから。俺がどうしようと勝手だろ」
「でも、偶然だね」
口にカップを運びかけた手を止めて、ケンジが言った。「何が?」
「あたし、このチョコ大好きなんだ。メリーのアソート」
ケンジは少し腰をもぞつかせて、紅茶を一口飲んだ。「そ、そうか。良かったな」
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「じゃ、いただきまーす」
マユミはそのアソートのチョコレートに手を伸ばした。
「どれにしようかなー」
マユミのその仕草を見ながらケンジは自分の鼓動が速くなっていくのを感じた。
ケンジは一週間程前、自分の洗濯物をベランダで干している時に、隣の部屋のマユミが着替えをしているのを偶然見てしまった。妹のマユミは気づかなかったようだが、ケンジはその
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