第1話
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ミゼット。
その顔には渋い表情が浮かんでおり、ゲオルグなる人物の資質を疑っていることは
向かいあって座るはやてにも容易にうかがい知ることができた。
「提督は、3年前に行われた武装集団の本拠地攻略作戦覚えてます?」
「3年前・・・・・・ねえ」
ミゼットは自らの記憶を探るようにその目を閉じる。
再びその両目が開かれたとき、ミゼットは口元に笑みを浮かべていた。
「3年前といえば、旧時代の遺跡を要塞化したところを攻略した作戦があったわね。
あなたが言っているのはあれのこと?」
「そうです」
はやてが真面目な顔をして頷くと、ミゼットは眉間にしわを寄せ胸の前で腕を組む。
「あなたもよく知ってのとおり、あまりいい思い出ではないけど、
あの作戦がどう関係あるのかしら?」
「そうですね」
顔をしかめたミゼットの言葉に、苦笑しながらはやてが頷く。
はやてとミゼットが話している3年前の作戦というのは、
ある武装勢力が遺跡を要塞のように改造して本拠地として使用していたのを
本局の作戦部と捜査部が合同で作戦を立案して実施された攻略戦をさす。
ミゼットはこの戦いを"いい思い出ではない"と評したが、
これは些か控え目な表現といえる。
というのもこの作戦、開始直後に作戦司令部が敵の攻撃に直撃され
司令部の中心メンバーが軒並み戦死するという凄惨な被害を出したのである。
「確かにあの戦いは私にとってもええ思い出とは言えませんけどね、
その中でも得るもんはあったんですよ」
この戦いに捜査部側のメンバーとして参加し、その顛末を現地で見ていたはやては
口元に浮かんでいた笑みを残したまま、ミゼットに向かって話しかける。
「というと?」
「ある優秀な陸戦指揮官と出会えたことですね」
訝しむような表情で尋ねるミゼットに対して、胸を張るようにして自慢げに語る。
「覚えてはりませんか? 作戦序盤で司令部が全滅したのになんで
作戦目標を曲がりなりにも達成できたんか」
「そうねえ・・・」
ミゼットは小声でそう言うと、向かいに座るはやての頭上辺りに目線をさまよわせて
自らの記憶を探っていく。
ややあって、何かを思い出したかのようなスッキリした顔をして
はやての目を真っ直ぐに見詰めた。
「確か、作戦部に所属する若い士官が作戦指揮を引き継いで実戦部隊を統率。
計画通りに事を運んで何とか作戦を成功に導いた、だったのではない?」
「そうです。 それで、その若い士官こそが・・・」
「ゲオルグ・シュミット。 当時2等陸尉、よね? ようやく思い出したわ。
まったく、歳はとりたくないものね・・・」
ミゼットが忘れっぽくなった自分自身
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