泥を踏み抜き光を求む
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損害を生むからである。
病気になったのは郭図のせいでは無い。助からないのを知った後に、悪化を早めたのが彼なだけ。後継者の不信の証拠も十分、よって郭図は責められる事は無かった。
ただ……化け物が一人従者としてついているのが、上層部にとっても、郭図にとっても最大の誤算であった。
ソレを育てたのは袁家だ。人の命の輝きを己を満たす快楽として喰らう化け物を作ったのは、他ならぬ上層部である。
心の壊れた人形として使える駒が、夕に興味を持ってしまったのが歯車の軋み。沮授だけは、それを見越して明と夕を引き合わせていたのだ。
沮授は決して自刃しない。生きている限り、沮授は袁家の改善を望み続ける。それが彼女なりの忠義というモノであった。寝台の上で、沮授はその生が尽きるまで筆を取ると決めていた。
夕に明を付けたのは親心、袁家で過ごすならば改善に尽力出来るように、離れるならば他でも生き抜けるように。
そうこうしている内、一日二日で上層部と郭図はあらゆる対策を練った。一人の化け物が“食事部屋”に籠っている内に手を打った。如何にして最大限の利を得つつ、全てを操れるかの一手を。
失態は己で注がなければならない。郭図は……これを好機と見た。自分が上り詰める為の好機、と。
残虐な拷問の末に、医者から当然の如く出るのは郭図の名。
「その時……ちょこちゃんは……」
「ど、どうしたんですの?」
ゴクリと生唾を呑んで問いかけた麗羽に、斗詩は真っ青な顔をして恐怖の色が濃い目を向けた。
「郭図さんの屋敷の人を……皆殺しにしたそうです。誰も逃がす事無く、一人一人、絶叫を上げる間も無く首を刈って」
「な……」
「その数総勢五十人。私も麗羽様も、知らなかったですよね? そんな事があったなんて」
絶句。
まさか、と思った。それほどの規模ならば耳に入っていてもおかしくないはずであった。
それを読み取った斗詩は、慄く唇から続きを紡いだ。
「生贄、だったんですって。時間を稼ぐための。ちょこちゃんがどう動くか予想していた郭図さんは、ちょこちゃんの到着報告を受けて秘密経路で一人の伝令を城に送り、田ちゃんを確保させてたらしいです」
「そこまで……するんですの……あの方々は……」
憎らしげにギリと歯を噛みしめた麗羽の前で、斗詩はぶるぶると震えだした。
「わざと屋敷に残っていた郭図さんは、そうして怒りに燃えるちょこちゃんと相対したそうです。ちょこちゃんにとって田ちゃんは命より大切なモノ。だから、人質にすれば傷つけられるはずが無い、きっとそう考えて……でも……」
もう我慢できない、というように斗詩は自分の身体を抱きしめた。
「ちょこちゃんは……人質が居なくなれば郭図さんをありとあらゆる手段を使って殺すだけって言っ
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