泥を踏み抜き光を求む
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。真剣な表情で麗羽の方を向いた斗詩は、麗羽の湯飲みに穏やかな香り漂うお茶を注いでいった。
「では、話しますね。田ちゃんの事。そして、ちょこちゃんと郭図さんのお話を」
緩い日差しが差し込む中庭の東屋。
斗詩の口から、麗羽の王佐たる少女の絶望が紡がれていった。
†
それは黄巾よりも前に起こった。
少しばかりの不調を訴えながらも机に向かっていた沮授が、血を吐いて倒れたのだ。
号泣している夕の声が聴こえて飛んできたのは警備の兵達。担がれて直ぐに寝台へと連れて行かれた。
この時代の医者というのは、病について現代のようにはっきりとは分からない。
今まで伝えられてきた症例と重ね、その時に効いた薬を調合して飲ませるくらいが治療である。この時代の医者の扱いはあまり良くない。直せなければ詐欺師扱いされる程に。
沮授の病は、症例が少なかった。
故に、薬がどう作られるかを知る医者は少なく、探している間に悪化の一途を辿り、歩けぬほどになった。
薬が見つかっても延命程度と知らされた時、絶望の淵に堕ちたのは夕。
ちなみにその頃には桂花はもう居ない。居れば必ず、夕は桂花の事を利用していた。
筆頭軍師に沮授から推薦された彼女は、どうにか母を救おうとあらゆる手立てを調べに調べた。上層部もさすがに沮授の才を失うのは痛かった為に、それに協力した。
そんな中、袁家のお抱えとなった沮授専属の医者は調合材料に特殊なモノを要求していたのだが……その内の一つが、必要のないモノだとやっと見つかった別の医者から分かった。
当然、偽りの材料を求めた医者には制裁が待っていた。
夕を絶望に落としたモノを許さない女が、一人。
医者の知識は素晴らしい。明はそれを知っていた。どうすれば人を生かす事が出来るか……それを裏返せば、どうすれば人を殺せるか、だ。
明はその医者から知識を吸い取った。長い長い日数を掛けて。そうすれば命を助けてやる、と嘘を付いて。もし、夕が病気に掛かった時にどうすればいいかも知る為、そんな理由もあった。
その日数が拙かった。一人の男がその間に、上層部を懐柔した。
曰く、田豊は叛意の疑いあり。沮授のように忠誠を誓わず、袁本初を傀儡とせずに、いずれは袁家の体制を内側から劇的に改革するやもしれぬ。
嫉妬は根深い。
沮授を陥れる時機を今か今かと待ち焦がれていた郭図が、その後継者たる夕に網を張らないわけがあろうか。
桂花との交流がバレていたのだ。だから郭図は、自分の身が危うくなった時に使う切り札として、その証拠を残しておいた。
かくして郭図の思惑は成功。上層部は夕を縛る事に決めた。
処断しないのは沮授という有能なモノを失って、さらに補佐をしていた夕まで失う事は多大な
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