泥を踏み抜き光を求む
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たい。生に縋りつきたいのだ。
上層部の愚かしさを知っていながら悲しむだけで動かないのはその為。強引な改革を始めようとすれば、毒を盛られてじわりじわりと弱らせられながら、分家の跡取りでも立てられる。
何がしかの責を押し付けられて家から放り出されても、他での生き方を知らない彼女はのたれ死ぬしかない。外は怖い。野盗もいる、暴漢もいる、袁家に恨みを持っているモノも多々いる。見た目がいいだけに、どれだけ蹂躙されるかも理解していた。
前の戦二つで首の挿げ替えには十分な理由となっている。もはや袁本初は、“曹孟徳に勝利出来る可能性”という首の皮一枚で繋がっているだけであった。
死への恐怖から、切り捨てられる事への恐れから、彼女はこの街に居る間は何も出来ない。
麗羽には上層部への発言権もほぼ無い。首を縦に振るだけの簡単なお仕事をしているに過ぎない。事務仕事、豪族達との謁見、地方へ出向いての外交もままあるが、それも言われたままをこなすだけ。こなせるだけの才と社交能力を備えている事を、外部の人間たちは家の金とバカの仮面に惑わされて気付けない。ただ一人以外は。
高貴な生まれの彼女は、他勢力との付き合い、上の人間との付き合いなどで外交能力等々が磨かれてきたのだが、それが当たり前の事と思っているから、本人でさえその凄さに全く気付いていないのも、誰しもに見抜かせない理由かもしれないが。
王佐達を得た事で麗羽は自信を持ち始めたが、まだ勇気が足りなかった。
猪々子や斗詩に守ってやると言われても、彼女達に何か危害が加わるのも怖かった。袁家というこの場所は、麗羽にとっては黄金で作られた牢獄に等しい。
二人と緩やかな会話を繰り返して和みながらも、麗羽の心には悲哀が来る。
――もし、次の戦で勝てなかったら……わたくしもこの二人も、夕さんと儁乂さんも……用済みと断じられる。政治的に見れば、戦の責を持って首が飛ぶのはわたくし。勝つためには猪々子さんも斗詩さん儁乂さんも決死で戦わなければならず、疑われている夕さんは戻っても処断が必定。なんて……なんて私達に苦しい状況ですの……。白蓮さんの作った家とは、どうしてこうまで……
違うのか……と考えて二人に気付かれないように眉を少しだけ寄せた。
二人との会話に微笑みながら、心で涙を零した。
白蓮の作った家が羨ましい。自分の家は、いつでも安息の場所では無い。彼女が作っていたと聞く平穏な日常が欲しい。そう、心から願った。
出来るなら、彼女と共に作りたかった。河北動乱で彼女を従えられなかった今となっては、叶わない願い。
――こんな弱気ではダメですわ! 勝てばいいのです、勝てば! 華琳さんに勝てば袁家改革派を立ち上げる事も容易。わたくしの、“袁本初”の名声が過去を上回り、内部対立もこちら側に傾
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