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相州戦神館學園 八命陣×新世界より  邯鄲の世界より
プロローグ 盧生に近し者
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言っているかのようだった。

 そしてスクィーラの目の前に黒い霧のようなモノが集まり始める。それは寒天のように滑らかでありながら、著しい不潔さを感じさせる鬱気を滲み出させている。

 おそらくその内部には、ありとあらゆる汚物がはち切れんばかりに詰まっているからだろう。暗黒に染め抜かれた表面は一切の光沢を発していない。

 そしてそれは徐々に形を成してきた。ぞわぞわと歌うように微細な振動を繰り返しながら形づくられていくその様は、どこか耳元で飛び回る羽虫の不快さを連想させる。

 いや、これは実際に、極小の何かが寄り集まった群れだった。その何かを定義するなら昆虫に喩えるのがもっとも近い目に見えぬほど小さな蚊や蝿、蜂や百足、蜘蛛、ゴキブリといった、生理的嫌悪感を催す諸々で編み上げられた黒い霧。その身を構成する粒子の一つ一つが汚らわしく、同じ世界に存在するのが誰であっても許せなくなるような影であり、邪悪なエネルギーの集合体そのものだった。

 不快感と嫌悪感の奔流が精神だけの存在となったスクィーラを襲う。肉体がない分、ダイレクトにそれらの感情がスクィーラを支配していた。こんな存在がいる世界ということはここは地獄なのだろうか?或いはもっとおぞましく、口にするのも憚られる世界なのか? 目の前の存在を言葉で形容するのであれば「悪魔」としか呼べないだろう。

 そしてソレはついに形を成してスクィーラの前に現れたのだ。

 その面貌は煙状に揺らいでおり、身に纏う漆黒の僧衣もろとも闇一色に染まっている。故に容姿は分からない。無貌と評すべき外見ながら、それでもその存在が笑っていることが分かるのは、爛れた光を放つ瞳が愉悦の色に濡れているから。吊り上った口元が、すべてを嘲ってるのだと告げているから。

 
 「あぁんめい、いぇすぞまりぃあ」

 そしてソレは宗教の聖句のような言葉を口にする。

 スクィーラは内心思っていた。自分の目の前にいる存在は悪魔なのだと。塩屋虻コロニーが手に入れたミノシロモドキは膨大なまでの宗教、科学、歴史、考古学、人類学という過去の人類の記録を全て網羅していた。当然スクィーラもそれらを熱心に学んだ。自分の今目の前にいる存在は西洋社会のキリスト教における「悪魔」の類のものだろう。

 ミノシロモドキから得た知識を引き出すと悪魔に関することが思い浮かんでくる。

 目の前の混沌が悪魔であるとするならば今自分がいるこの世界は地獄なのだろ
うか?

 「Sancta Maria ora pro nobisさんたまりや うらうらのーべす

Sancta Dei Genitrix ora pro nobisさんただーじんみびし うらうらのーべす 」

 悪魔は唄っていた。キリスト教における聖歌なのだろうが、
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