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相州戦神館學園 八命陣×新世界より  邯鄲の世界より
プロローグ 盧生に近し者
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かしもういいのではないだろうか? 旧人類を人間とはかけ離れた姿に変えそんな者達の支配者として君臨することが楽しいのだろうか? 先祖が敵対関係にあったのは知っている。しかしもう十分だろう? これ以上旧人類の末裔であるバケネズミを苦しめたい理由は何なのだ?

 町の人間がバケネズミに対してしてきた冷酷な支配を見直してほしかった。呪力を持つ強大な存在である町の人間になぜ戦いを挑んだのか? 戦いには敗北したものの、せめて町の人間にバケネズミに対する扱いが改めることを期待した。自分達がこれまでどんな思いで町の支配を受けていたか。常に町の顔色を伺いながら暮らしていくことがどんなに苦しく、過酷なのか。バケネズミが受けてきた苦しみを、痛みを、怒りを知ってもらいたかった。

 だがそれも無駄なことだった。裁判の際の傍聴席にいた町民達、裁判長の自分に向けた嘲笑の声が今にも耳に焼き付いている。スクィーラの期待を無残にも打ち砕いたのだ。そう、連中はバケネズミを苦しめてきたという罪悪感、後悔の念などなかったのだ。あくまでも自分達が被害者だと、自分達に落ち度はないと、バケネズミをどう扱おうが知ったことではないと……。

 戦いに敗れたこと自体が悔しいのではない、町の人間達がバケネズミをゴミのように扱っておきながら、それを欠片も後悔することなく、当然のことだと思い、自分達は何故バケネズミに攻撃され、反乱を起こされたのか理解しようとしないのが悔しいのだ。

 連中にとってはバケネズミの苦しみなど知ったことではないのだ。いつでも使ったり捨てたりできる便利な道具だと。バケネズミは感情を持たないロボットではない。町の人間とさして変わらぬ知能を持った生き物だ。そんな存在に対して自分達を都合のよい家畜にしておいて、何の不満も怒りも抱かないと本気で思っていたのだろうか?

 「やりすぎた」、「厳しくし過ぎた」という考えにも至らないとは。スクィーラの精神は怒りに支配されていた。町の町民に対する果てしない憤怒の炎を一層激しく燃え散らせる。

 そしてその「声」は、スクィーラが町への憎悪と怒りを燃やしている時に聞こ
えてきた。

 寒気が走る、怖気が走る、自分の耳に入ってくる声は否応なくスクィーラの神
経を掻き毟る。

 肉体はとうにない筈なのだが、正体不明の謎の声じゃ、精神だけの状態のスク
ィーラに確かな嫌悪感を抱かせていた。

 「いや、実に素晴らしい! 実に甘美で最高級の絶望だよォ。もしかしたら■■■■以上の絶望かもしれない!!」

 まるで何人もの人間が輪唱しているかのようなぶれた声だった。そしてその声
は嘘偽りのない確かな賛辞をスクィーラに送っていた。

 言葉や声自体は嫌悪感を催させる類のものではあったものの、口にした言葉の
は心の底からそう
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