第三十二話 居場所
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グランバニア。アベルのお父さんであるパパスさんの故郷であり、アベルが産まれた場所でもある。
私たちは、長い洞窟と無駄に強い魔物たちを乗り越えてようやくここまで来た。途中のチゾットの村でビアンカが意識を失い倒れるといった事態が起きたが、ビアンカは倒れたその日の真夜中には意識を取り戻していたしその後も何も起こらなかった。
「アベルはさ。グランバニアについてどう思う?」
チゾットの村に滞在していた時に私はアベルに聞いた。
「父さんの故郷だから気になるけど、僕の故郷としては思えないんだ。僕の故郷はサンタローズだよ」
と、アベルは言っていた。
「ようやく着いた〜」
私は言った。
「確かに長かったしね。プルプル」
「さて、入るか」
アベルが言った。
城門を通ると立派なお城が目についた。ラインハットの城より大きく城下町は見当たらない。
「あそこに小屋が見えるけど」
私は言った。
「取り敢えず入ってみよう」
アベルは小屋のドアをノックした。
「どなたさまですか?」
ドアの中から出てきたのは、茶色い髪に黒くつぶらな瞳の、小太りの男だった。
「久しぶりだね……。サンチョ」
「坊ちゃん!?坊ちゃんなのですか!?サンチョは、このサンチョはどんなにこの時を待った事でしょう。お帰りなさい坊ちゃん!」
「ただいま、サンチョ」
サンチョは涙目になりながら私たちに入ってくださいと言った。私は馬車とパトリシアを小屋の近くに待機させ、小屋に入った。
「おや、そちらの女性はもしかして……」
「ビアンカです。お久しぶりです。サンチョさん」
「僕たちは結婚したんだ」
「おめでとうございます、坊ちゃんとビアンカさん!」
「ありがとう。サンチョ」
「いえいえ。おっとそろそろスコーンが焼きあがるころですね」
スコーンか。私が好きなお菓子の一つだ。
私たちはサンチョの焼いてくれたスコーンと紅茶を食べながら、いろいろな話をした。話をしていたのは主にアベルだったけど。
「成る程……。ラインハットへ行ってから坊ちゃんが帰ってこなかったのは、そういう事だったのですか……。パパス様も坊ちゃんもお気の毒に……」
「いいんだ。奴隷にされていたのはもう終わったことだし、素晴らしい仲間に会えたからね」
私はその言葉に、父親の死がまだアベルの中で燻っているのを感じた。皆もそう思ったらしい。サンチョは話題を切り替え、これから城の中を案内すると言った。
「この城は防衛のため城の中に街があるのです」
サンチョはそう私たちに話しながら、城の中を案内
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