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蒼穹のストラトス
プロローグ
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て来るはずもない。だって誰も織斑一夏が誘拐されているなんて知らないし、信じてないんだもの。

「くっ!?殴ったね!━━━親父とお袋と兄ちゃんと姉ちゃんと弟と妹と祖父ちゃんと祖母ちゃんと甥と姪とお義父さんとお義母さんと親友と幼馴染みと初恋の人と初恋の人の彼氏と幼稚園時代のいじめっ子と小学生時代のいじめっ子と中学生時代のいじめっ子と高校生時代のいじめっ子と大学生時代のいじめっ子と大学院時代のいじめっ子と就職先の上司と先輩と後輩とお得意先と妻と娘と息子と妻の不倫相手と不倫相手の不倫相手と仮面ライダーとウルトラマンとトッキュウオーと宇宙刑事と近所の犬と近所の猫と極道と神室町のダニとセーラーマーキュリーとエスデス様と総理にしか殴られたこと無いのにっ!!」

「 いやむしろ殴られすぎだろ!?お前の人生にいったい何があったんだってんだよ!? 」

「けどお陰で今では総理と亜美ちゃんとはメル友だよ!」

自慢するようにちょんまげは胸を張る。子供のように、これでもかと。

「 ど う だ っ て い い わ !! いや、でも亜美ちゃん辺りなら確かに羨ましいけども!じゃなくてだな……はぁ、はぁ━━とにかくだ!」

ようやく沸点を下ろせるようになってきたところでザイチェフは未だ拘束されている一夏の方を見る。
助けが来ないという現実を叩きつけられたことが原因なのだろう。彼はハイライトを失った瞳でどこも見ないで、しかしどこかを見ているような、そんな不思議な眼差しをしていた。

「どうするかね、こいつは」

傭兵(こちら側)に引き込んで戦力に加えるのもアリだが、こうも露骨にトラウマレベルの経歴を知ってしまった以上、最悪壊れてしまいかねないと判断したザイチェフは即刻に脳内で却下を下した。
ならこのまま送り返してやるべきなのだろうが、こんな状態ではこれから先まともな生活を送ることは不可能に近いのも確実だ。
保護してやることも出来ない。返してやるのは論外。となれば残された道はただ一つだ。

「とか言って、結局のところはいつもみたいに逃がしちゃうんでしょ?」

「まあな、依頼人(クライアント)からはただ誘拐してこいとしか請け負っていないからな。そしてウチは無駄な殺生をしない。流さんで済む血は決して流させないってのがモットーだからな」

ザイチェフは目配りで仲間に指示を出し、仲間たちもそれに応えるようにすぐさま一夏を拘束していた縄を流れるような作業であっさりと解いた。
解放されても未だ生気を感じさせない一夏にザイチェフは問い掛ける。

「さて、坊主。お前さんはこれで自由の身だ」

「……じ、ゆう………?」

自由という言葉に反応して、ようやく下に垂れていた一夏の顔が上がる。
その声はひどく感情の起伏が薄かった。数時間前までは明
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