プロローグ
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「おいおい、こりゃ一体どういうことだってばよ?」
携帯のワンセグを観ながら、誘拐を依頼された『合衆国ニッポン!\〈0〉/』のリーダーこと、人呼んで黄昏のザイチェフは怪訝な表情をする。
「このガキを誘拐すれば、織斑千冬は決勝に出場しないんじゃなかったのか?」
チラリと後ろで逃げ出さぬよう縛り付けられた今回のターゲットである少年、織斑一夏に視線を向けてみる。
彼の疑問に答えてくれる者など誰もいない。
別にこの場に彼と一夏しかおらず、口に猿轡をされている少年と二人っきりの中で話せる相手もいないボッチ状態に耐えられずについ漏らしてしまった独り言とかではない。実際に、両の隣には褐色肌の女性と金髪のちょんまげをカツラにして被ってる変人白人男性の他にも五人ほどの部下がいるのだ。
「さて、ね。単純に見捨てたってことなんじゃないかしら?」
「見捨てた?ありえんだろ。依頼人の話が確かなら織斑千冬ってのは家族を大事にしているって聞いてきたんだぞ?」
眉間を寄せながら、ザイチェフは褐色肌の女性に問い掛ける。
対して女性は「多分ね」と、曖昧な回答を口にした。
「おそらく、大事にしているのは有能な人材だけだってそれ以外はいらない……とかそういうのなんじゃない?」
それなんて、お坊っちゃんお嬢様優遇だよと内心突っ込みをいれながらザイチェフは手元の資料に目を落とした。
資料には織斑家の家族構成、氏名、年齢、生年月日、血液型、好き嫌い、趣味、特技、経歴、出身地、働き先または通学先。果ては得意な体位までずらりと記されていた。ちなみに最後のをどうやって知ったかについては企業機密ということで。
そして、肝心の織斑千冬についての資料には、まだ幼い頃に両親を蒸発させられてから以来、弟二人の親として育ててきたとある。それ故に家族愛が強いとも。
「所詮は織斑千冬も人間。欲には勝てなかったってことでしょうね」
「ま、そもそも来るなんて始めから有り得ないと思ってたけどね」
と、それまで黙りこくっていた金髪ちょんまげが確信を秘めていたかのようにつぶやく。全員がその言葉に首を傾げ、ザイチェフは尋ねた。
「おい、それはどういうこった?」
「うん。ほら、そこの織斑一夏君を誘拐した後にその旨を脅迫文に書いて送ったじゃん?あの後一応念のためにと確認に行ったんだけど━━あれ、政府の人間が彼女の手に渡った途端に読みもしないでビリビリに破いちゃったんだよね。しかも『こんなデタラメに騙されるな』みたいなことも言ってたし」
「 いやそれ早く言えよこのスカポンタン!? 」
思わずザイチェフは利き腕の左ストレート(メリケンサック装備)で金髪ちょんまげに華麗なアッパーカットを決めて見せた。
そりゃあ迎えなん
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