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リリカルなのは
イスカリオテ
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運に、すべてに見放された少女は、それでもあきらめきれなかった。
 初めて自分に差しのべられた手に、最後の力を振り絞って。


「た、助けて……助けて、ください」


 絞り出すように言った。


「よかろう」

「おい、無視すんなよおっさん!痛い目にあいてえのか?」


 少女の言葉に、神父は頷いた。
 理解できないやりとりを前に、荒くれ者は、凄んだ。
 神父は、そんな彼らを全く相手にしていないような、自然体だった。
 懐から、2つの銃剣を取り出し、クロスさせる。
 そして言い放った。


「我らは――――」


 たしかに、少女は、ついていなかった。
 けれども、この日、救いを得たのだった。





 意識が浮かび上がる。
 目を開くと、ぼんやりとした視界が映る。
 そのときになって、うたた寝をしていたことに気づいた。


「夢、ですか。また随分と昔のことを思い出したものですね」


 あのとき――アンデルセン神父に救われたときからもう5年以上経つ。
 アンデルセン神父が懇意にしている孤児院に預けられ、やっと安息を得たのだった。
 お腹いっぱい食べられて、眠れるところがある。
 厳しい生活をしてきた少女にとって、そこは天国に等しかった。
 少女の境遇を聞き出していたアンデルセンは、同情からか、ことさら彼女を気にかけていた。
 だから、必然だったのだろう。
 彼を追うように、聖王教会のシスターとなった。
 彼と働けるように、戦闘訓練を積んだ。
 その結果――


「――お?任務ですか。やれやれ、『イスカリオテ』は便利屋じゃないんですけどね」


 イスカリオテ。
 聖王教会直属の組織であり、少数精鋭の戦闘集団でもある。
 少女も血反吐を吐くような訓練の末に、所属できた。
 何かと黒いうわさが多いが、その実情は、戦技教導隊に等しい。
 部隊長アレクサンド・アンデルセンを筆頭に、武闘派が揃っており、各地で騎士たちの教導にあたっている。
 もちろん、教導以外にも任務はある。
 しかし、最近多いのは――


「また治安維持出動ですか。『陸』に恩を売るチャンスだというのは分かるのですけど」


 ――陸からの依頼である。
 噂では、陸のレジアス中将とアンデルセン隊長が直接取引したらしい。
 いや、らしいではない。事実、取引したと、隊長から聞いている。
 もちろん、口外厳禁である。
 軽口をたたきながらも、慣れた手つきで素早く武装を整える。


 現場に赴くと、陸の部隊に包囲されながらも、抵抗を続ける魔導師がいた。
 なるほど、確かに高ランク魔導師だ。
 高ランク魔導師の少ない陸では対処は難しいだろう。
 最前線へと
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