リリカルなのは
イスカリオテ
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運に、すべてに見放された少女は、それでもあきらめきれなかった。
初めて自分に差しのべられた手に、最後の力を振り絞って。
「た、助けて……助けて、ください」
絞り出すように言った。
「よかろう」
「おい、無視すんなよおっさん!痛い目にあいてえのか?」
少女の言葉に、神父は頷いた。
理解できないやりとりを前に、荒くれ者は、凄んだ。
神父は、そんな彼らを全く相手にしていないような、自然体だった。
懐から、2つの銃剣を取り出し、クロスさせる。
そして言い放った。
「我らは――――」
たしかに、少女は、ついていなかった。
けれども、この日、救いを得たのだった。
◆
意識が浮かび上がる。
目を開くと、ぼんやりとした視界が映る。
そのときになって、うたた寝をしていたことに気づいた。
「夢、ですか。また随分と昔のことを思い出したものですね」
あのとき――アンデルセン神父に救われたときからもう5年以上経つ。
アンデルセン神父が懇意にしている孤児院に預けられ、やっと安息を得たのだった。
お腹いっぱい食べられて、眠れるところがある。
厳しい生活をしてきた少女にとって、そこは天国に等しかった。
少女の境遇を聞き出していたアンデルセンは、同情からか、ことさら彼女を気にかけていた。
だから、必然だったのだろう。
彼を追うように、聖王教会のシスターとなった。
彼と働けるように、戦闘訓練を積んだ。
その結果――
「――お?任務ですか。やれやれ、『イスカリオテ』は便利屋じゃないんですけどね」
イスカリオテ。
聖王教会直属の組織であり、少数精鋭の戦闘集団でもある。
少女も血反吐を吐くような訓練の末に、所属できた。
何かと黒いうわさが多いが、その実情は、戦技教導隊に等しい。
部隊長アレクサンド・アンデルセンを筆頭に、武闘派が揃っており、各地で騎士たちの教導にあたっている。
もちろん、教導以外にも任務はある。
しかし、最近多いのは――
「また治安維持出動ですか。『陸』に恩を売るチャンスだというのは分かるのですけど」
――陸からの依頼である。
噂では、陸のレジアス中将とアンデルセン隊長が直接取引したらしい。
いや、らしいではない。事実、取引したと、隊長から聞いている。
もちろん、口外厳禁である。
軽口をたたきながらも、慣れた手つきで素早く武装を整える。
現場に赴くと、陸の部隊に包囲されながらも、抵抗を続ける魔導師がいた。
なるほど、確かに高ランク魔導師だ。
高ランク魔導師の少ない陸では対処は難しいだろう。
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