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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
錬金術師の帰還篇
35.水精の剛硬
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た。しかし彩斗はいまだ目を覚まさない。いつ呼吸を止めてもおかしくない。
 彼の胸には先ほどまであったはずの銀の刃がなくなっていた。先ほどの金髪の少年が持っていったのか、それとも爆発で飛ばされたのかはわからない。
 それに夏音と彩斗がなぜ無傷で爆発を凌たのかもわからない。

「せん……ぱい?」

 雪菜の絶望に満ちた声。
 甲板の上。眷獣を放った姿勢のまま古城は動きを止めている。

「お兄さん?」

「うそ……でしょ」

 雪菜が古城のそばに駆け寄ってくる。

「先輩!? しっかりしてください、先輩!」

 そして言葉を失う。
 そこにいたのは古城ではなかった。古城の姿をした鉛色の彫像だ。
 なにが起きたか夏音には理解することはできなかった。それでも雪菜と友妃の表情を見る限り、それがどれほどことなのかは理解できた。

「そん……な……先輩……」

 雪菜は古城の足元にへたりこむ。

「そんなこと──」

 雪菜が唇を噛みながら、銀色の槍を握りしめる。

「どうして!?」

 光り輝く槍の穂先を押し付ける。しかし変化は起きない。
 力を失った雪菜の手から、銀色の槍が滑り落ちて足元に転がった。

「……ひとたび物質変成によって金属に変えられたものには、もはや魔力は働いておらぬ。たとえその槍が魔力を無効化するとしても、元の姿に戻ることはできぬ。そこにいる古城は、吸血鬼ではなく、古城の形をしたただの金属(モノ)だ。それに殺されなければ、生き返ることもない」

 放心する雪菜に、途切れ途切れの小さな声が聞こえる。雪菜がのろのろと振り返る。
 そこには上半身だけになったニーナの姿があった。

「……一瞬だったが、古城が船を霧にして粒子砲の直撃から救ったのだ。(ヌシ)の友人たちを護るために。だが、おかげで古城自身は、直後の天塚の攻撃から逃れられなかった」

 そこまで告げたところで、ニーナの身体は砕けた。

「……(ワシ)の力では、(ヌシ)を護るので精一杯であった。すまぬ……」

 その言葉を残し、ニーナの言葉が途切れた。
 夏音は徐々に呼吸の音が薄れていく彩斗へと視線を落とす。このままでは彼が死んでしまう。それでも夏音に助けられる術はない。
 なにもできない夏音はただ祈ることしかできなかった。
 友妃にもなにもすることはできない。それにこのままではフェリーも沈んでしまう。
 夏音が無力さに涙を浮かべる。

『彩斗を助けたい?』

「え……?」

 頭に直接流れてくるような澄んだ少女の声が響く。辺りを見渡すがその声の主はどこにもいない。

「どうしたの、夏音ちゃん?」

「いえ、声が……」

「声……?」

 どうやら夏音にしかこの
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