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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
錬金術師の帰還篇
35.水精の剛硬
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「彩斗さん! 彩斗さん!」
夏音が何度も目の前で倒れている少年の名を呼び続ける。
彩斗の肉体には、致命傷を負うような傷は見当たらない。左胸にメスのようなものが刺さってはいるがそこから血液は一滴も垂れていない。多分、心臓に到達しているわけではない。
それなのに彼は倒れ、ピクリとも動く気配がない。
「こんなバカみてえなもんを考えるとは、ホントあの女は恐いね」
金髪の少年が髪をかきあげながら夏音へとゆっくりと歩み寄ってくる。かきあげられた髪から真っ赤に染まる瞳がのぞく。それは恐怖さえも覚えるほどだ。
その足取りはとてもゆっくりで雪菜と友妃なら軽く止められるであろう。それなのに二人は動かない。
いや、誰も彼の身体から溢れ出してくる底が知れない魔力に動くことができない。獅子王機関の“剣巫”と“剣帝”も、第四真祖も、大錬金術師も、人の魂を植え付けられた
人工生命体
(
ホムンクルス
)
も動けなかった。
『カカカカカカ──面白いぞ。不完全なる
存在
(
モノ
)
よ』
唯一“
賢者の霊血
(
ワイズマンズ・ブラッド
)
”だけは彼に怖気ずくことはないようだ。
「人工の“神”だかしらねえけど俺はテメェには用はねえからよ」
彼は不敵な笑みを浮かべながらもそれでも歩みを止めずに彩斗と夏音の目の前までついに訪れた。
夏音はとっさに彩斗を護るように身体に覆いかぶさる。
『カカカカカカ──世界よ、完全なる我の一部となれ』
そのときだった。フェリーの船体を貫いて、海中から巨大な“
賢者の霊血
(
ワイズマンズ・ブラッド
)
”の塊が浮上する。
それは甲板に落ちていた黄金の髑髏を呑み込んで、完全なる人の形になる。
全高六、七メートルにも達する巨人──
「させるか──!」
古城が叫んだ。黄金の巨人が閃光を放つとほぼ同時──
そして巻き起こった凄まじい爆発が、フェリーの船体を真っ二つに引き裂いた。
周囲には粉塵が舞っている。破壊されてからまだ熱が籠っている。
夏音は、爆発の余韻が残る光景に目を疑う。先ほどとの光景とは、周囲が一変していた。
フェリーの船体は、船首から四分の一程度から前後に裂けている。船体の後方に避難した生徒たちはおそらく無事だと思う。
腕の中にはいまだ目を覚まさない彩斗がいるだけで周囲には誰もいない。先ほどまで目の前にいた金髪の少年も最初からいなかったようになにも残っていない。
「夏音ちゃん!」
周囲を見渡していると粉塵の中から銀色の刀を握った友妃が駆け寄ってくる。
「無事でよかったでした。雪菜ちゃんとお兄さんは?」
「雪菜は向こうで気絶してる。古城君はわかんないけど、無事だと思うよ」
それを聞いて夏音は胸を撫で下ろし
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