魔石の時代
第三章
世界が終わるまで、あと――1
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…?)
光の様子がおかしい。他にも憂鬱の種には、事欠かないが――今一番気になる事はそれだった。何か、いつも妙にピリピリしている。管理局がやってきたから。原因はそれだと思うのだが……。
(ううん。そうじゃない)
おかしくなったのは、もっと前――温泉郷でジュエルシードを封印した時からだ。あの時から、少しずつ何かがおかしくなり始めた。妹さんを傷つけた事を怒っている訳ではない……と思う。少なくとも、私達に対する態度が変わったと言う事はない。むしろ、今まで以上に気遣ってくれている。なのに、時々妙に怖く感じる。
優しくしてもらえばもらうほど。
母のように、ある日突然豹変してしまうような気がして。
(母さんは研究が忙しいだけ! 光も、管理局が来たから警戒してるだけなんだ)
自分ひとり騙せないような嘘を自分に言い聞かせる。と、洗い終わりを告げる洗濯機のアラームが響いた。二人の気配がそちらに移動するのが分かる。
「やれやれ。そう言えば今日は曇りだったな……」
「イヤだねえ。鬱陶しくて」
「それもそうだが……。これじゃあ、洗濯物が乾かない」
「……いや、やってもらってる以上文句は言わないけどさ。アンタって、何か妙なところで所帯染みてない?」
「放っておけ。というかだな。仮にも女なら自分の下着ぐらいは自分で洗おうとは思わないのか?」
「いいじゃん別に。見られたからって減るもんじゃないんだし」
「……まぁ、お前らしいと言えばお前らしいか」
そんなやり取りをしながら、洗濯かごを持った光とアルフが戻ってきた。ここ最近で、すっかり見慣れた光景だった。……この世界に来てからの、私の日常。それがそこにあった。それは、何も変わっていないのに。
(でも、リニスだって突然いなくなっちゃったんだ……)
ずっと続くと思っていた日々は、ある日突然、何の前触れも無く終わってしまう。そんな事は、嫌というほど知っていた。
「…――ト。フェイト?」
「え?」
どうやら、しばらく呼ばれていたらしい。気付けば、目の前に光の顔があった。
「どうかしたか?」
「な、何でもないよ?」
「だが、泣きそうな顔をしている」
慌てて目元に手をやって――自分の失敗に気付いた。これでは、泣きそうだったと言っているようなものだ。
「あの、本当に……っ!」
わたわたと言い訳でもするように――誰に何を言い訳すればいいのかもよく分からないまま、言葉を探す。
「大丈夫だよ」
そっと頭を撫でられた。本当に、本当に泣きそうになった。いや……少し耐えきれなかったのかもしれない。頬を何かが滑り落ちていく感触を覚えた。
「大丈夫だ。確かに厄介事は増える一方だが……まぁ、今までの事を思えば、これくらいはまだ平気だよ」
苦笑でもするように、光は言った。根拠などあるとは思えな
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