願いの刃は殻を割く
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は……憎らしい相手の情報収集であるが、雛里の為だと割り切って部隊長の話に耳を傾け始めた。
「徐晃隊が発足してからは入隊試験ってのが出来たんです。仮入隊した兵士に地獄のような訓練を十日間経験させて、最後まで残ると言ったモノだけが入隊ってぇ簡単なモノですが。倒れるまでやらされる突撃、倒れても誰も助けちゃくれませんし、休憩は半刻にも至らない。体力的にはメシが受け付けなくなるくらい追い詰められる。上司の命令には絶対服従。聞けなきゃ罰則で部隊長格と一騎打ち。日が暮れてもぼっこぼこになるまで叩き潰される。んで、最終日には俺達既存の兵と仮入隊の兵士での紅白戦。倒れるまで戦わせ、あざだらけになるまで叩き潰します。まあ、そんな事してたら逃げ出す兵なんざ七割を越えるのが当たり前になりますわな」
武官では無い桂花にはどんなモノか明確には分からなかったが、血反吐を吐くまで馬上訓練をやらせる霞の練兵と似たような感じでは無いかと予想を立てた。
「“この程度に耐えられねぇなら他の奴等を巻き込んで死ぬだけだ、お前らが味方を殺すんだ、だから兵士になるのは諦めろ。御大将の部下と同じ軍の兵士は殺させねぇ。だが味方を殺して自分も死にたいならどっか他の軍にでも申し込めばいい。失せろ、守りたいもんも本気で守ろうと出来ねぇクズ共が”……なんて、逃げ出すモノに対する副長の言葉で戻ってくる奴もいますし、残った奴等は心を高められます。最後まで残った奴等に御大将が守りたいモノを問いかけて、一人一人が自分から入って戦いたいと言ってやっと徐晃隊に入れるんでさ。腰抜けは逃げ出し、我欲が強い奴は憤慨し、自尊心が高い奴はどっかいっちまう。ま、そんな奴等と戦うなんざ俺達もごめんです」
一呼吸を置いた部隊長は、ここからが本番だと表情を引き締めた。
「入隊後の兵士に御大将が最初に命じる事、なんだか分かりますか? まあ、俺達も徐晃隊発足の時に命じられましたが」
急な問いかけに対して、むむ、と眉を顰めた桂花。雛里は知っているようで、両手で愛らしく湯飲みを持ってお茶を飲んでいた。
「……軍規を順守する事、じゃないの? 徐晃隊は私達の軍を参考にしてたみたいだし」
軍としては当然の命令である。軍規を乱す行為は例え一兵率であろうとも許されない。黄巾の時に秋斗が参考にしたのが曹操軍であるが故の答え。
されども、部隊長はふるふると首を振って否定を示す。
「いんや……そんなもんは二の次です」
「そんなもんってあんたねぇ――――」
「くくっ、俺達徐晃隊に入る奴等にとっちゃあ、規律よりもっと大事な事なんですよ」
呆れて言い返そうとした桂花であったが、苦笑と共に止められる。
雛里はただ、ぼーっと宙を見つめて、いつでも優しい彼の事を思い出していた。
「じゃあ、何よ」
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