願いの刃は殻を割く
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たと伝える為に、笑みを零して……死ぬ。
秋斗には決して言わず、笑顔の意味は彼らの胸の内にのみあった。聡い秋斗が理解していようとも、直接伝えてしまえば、彼の重荷になると知っていたから。
「“御大将”の代わりに子の姿を見ておこう、そういう事ですか」
雛里は久しくその呼び名を聞いた気がした。鳳統隊では今の今まで、一度たりとて口にされた事は無い。震えそうになる胸の内を、掌と共に閉じる。
コクリ、と頷いた雛里をみて、部隊長は笑みを零した。
「鳳統様は本気で御大将の想いを……隅々まで繋ぐ気でいるってわけですかい」
「いいえ。私だけではありません。あなた方と私で、です。彼の想いは私達の胸の内に。今回の件も一つ一つの幸せを皆で祝福したい、と思いまして……」
「くくっ、さすがは我らが軍師様。ありがとうございます」
「改めて、おめでとうございます」
感慨深げな表情で頭を下げる部隊長に、雛里は綺麗に微笑み返した。
二人が話す中、桂花はじっと黙って耳を傾けるだけであった。そんな桂花に、部隊長は優しい瞳を向ける。
「どうしました?」
「あ……お、おめで、とう」
「荀ケ様もありがとうございます」
ふっと微笑みと言葉を返しての一礼。
桂花は男相手に祝福の言葉を素直に零せた事に自分で驚愕し、照れたようでふいとそっぽを向いた。
「あと、お話して欲しい事があるんです」
「俺に?」
一度だけ目を閉じた雛里からの唐突な話題変換。首を捻る部隊長の前で、桂花は身体を強張らせた。
大きく深呼吸を二回。口を開いたのは、桂花であった。
「なんであんた達は徐晃に……ううん、黒麒麟にそこまで想いを向けれるの?」
ずっと尋ねたかった疑問である。
鳳統隊……否、徐晃隊に軍師として興味を惹かれたのもあったが、何よりその想いの根幹が知りたかった。決して徐晃隊を扱おうというわけでも無く、そんな部隊を作ろうと思ってもいない。雛里の心の負担を減らす為には、聞いておいたほうがいいと思っていたのだ。
雛里が祝いの言葉を伝えに行くというからそれに乗っかり、共に戦うのだから徐晃隊の想いを知っておいたほうがいいと伝えていた。
雛里は秋斗という人物がどういった行動をしてきたのか、それを教える事で彼女の思考を広げるのもアリか、とその提案を是とした。
どう答えていいのか分からずに、悩む部隊長であったが、ポン、と一つ手を叩いてうんうんと頷く。
「じゃあ、ちょいと御大将と俺達の話をしましょう。鳳統様は……お辛くなったら妻の部屋に。機会があれば話をしたいと言ってましたから、もしよろしければ聞いて頂きたいのです」
一寸だけ首を傾げた雛里は、気遣いに微笑みを返して小さく頷いて目を瞑り、“彼”に想いを馳せて行く。
桂花
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