第十三章 聖国の世界扉
第一話 差し伸ばされる光
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おもてなしの準備を―――っとと」
アンリエッタの声に振り返った教皇―――聖エイジス三十二世であるヴィット―リオ・セレヴァレは、抱えた本を持ち上げ小さく頭を下げた。その際、重ねた本の何冊かが、手からこぼれ落ち床に散らばる。慌てて拾おうとするヴィット―リオだが、それよりも先に手を伸ばした者がいた。
「一度に全部運ぶよりも、少しずつ片付けた方が意外と早く終わりますわ」
しゃがみ込んで散らばった本を手に持ちながら、アンリエッタは立ち上がり、近くの本棚に歩み寄る。不自然に隙間がある本棚に並ぶ本の種類を見て、何処に手持ちの本が収まっていたのか推測しながら、アンリエッタは本を収めていく。手持ちの本を全て本棚に収めたアンリエッタは、ヴィット―リオに向かって振り返る。
「更に言えば、手分けすると、もっと早く終わります」
悪戯っぽく笑うと、一瞬呆気に取られたように目を丸くしたヴィット―リオとジュリオであったが、直ぐに笑い声を上げ、うんうんと頷き机の上に散らばる本を片付け始めた。
散らばっていた本が全て本棚に収められると、アンリエッタはヴィット―リオに向き直り、視線で本棚を示す。
「収める場所は間違ってはいないでしょうか?」
「ええ。大丈夫ですよ。バッチリです」
合格を受けたアンリエッタは、安堵したように小さな笑みを浮かべると、再度ヴィット―リオに向き直った。すると、ヴィット―リオはアンリエッタに向かってニッコリと笑ってみせた。誰もが見惚れるだろう魅力的な笑顔である。弧を描く目の奥に宿るのは、深い知性と慈しみ。まだ二十を幾つか超えたばかりだろうに、まるで歳経た賢者のような慈愛が見える。
ただ笑うだけで、これだ。この若さで教皇の地位に着いたのは伊達では無いということだろう。
アンリエッタは顔に浮かべた笑みを崩すことなく、その裏で思考を巡らせながら頭を垂れた。
公式な場で、アンリエッタの上位に当たる者は、このハルケギニアには二人いる。ハルケギニア最大宗教であるブリミル教の頂点たる教皇と、ハルケギニア最大の国家であるガリア王国の王ジョゼフの二人だ。
「頭をお上げください。そのように畏まる必要はありません」
「では、お言葉に甘えまして」
顔を上げたアンリエッタは、目の前にある異様と言えるほど整った美しい顔を見る。
「早速ですみませんが、聖下から送られてきた招待状に書かれていたことについてのお話を伺っても?」
「ええ、構いません」
「そう、ですか。なら―――」
「護衛隊長どのならば臨席されても結構ですよ。ここにいるという事は、この方もある程度事情をご存知なのでしょう」
アニエスに視線を向け何かを言おうとしたが、ヴィット―リオに遮られた言葉を聞いて、アンリエッタは頷いて見せる。
「
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