第十三章 聖国の世界扉
第一話 差し伸ばされる光
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を寄せた。
「けなしたわけではありませんのよ。こちらこそ、不快な気持ちにさせてしまったのでしたら申し訳ありません」
「そんな、滅相もありません。それでは、我が主が陛下をお待ちしておりますので、どうぞ、こちらへ」
ジュリオは軽く首を左右に振って謝罪を軽く受け止めると、馬車のドアを開け、アンリエッタの降車を促す。馬車から降りたアンリエッタとアニエスを、ジュリオが先導し大聖堂へ向かって歩き出す。アンリエッタが乗っていた馬車の後ろに付いてきていた使節団の者たちは、それぞれの馬車の前に待ち構えていたロマリアの政府の役人たちが出迎え、別の方向へと向かっている。その様子を目の端で確認している間に、アンリエッタは何時の間にか大聖堂の中へと足を踏み入れていた。
さっと空気が変わるのを感じ、アンリエッタは顔を上げる。天井近くに設置されていた明かり窓に、はめ込まれたままのステンドグラスに陽光が突き抜け、七色のシャワーとなってアンリエッタへと降りかかってきていた。
目の上に手を掲げ、眩しげに細めた目で天井を見上げ、不意に、自分が今ここにいる理由について思い返した。
―――『式典の二十日ほど前に入国されたし。神の奇跡をお見せします』……神の、奇跡……そう、つまり、もう隠す気はないと言うことですか。
ジュリオに先導されアンリエッタとアニエスは大聖堂の奥へと進み、そこに広がる光景を目にし、驚きを示した。
「っ、これは」
「…………」
大聖堂の一階。その中に数ある広間の一つに広がる光景。それは、先程アンリエッタたちが街で見かけた貧民たちに似た者たちの姿があった。彼らは薄汚れた姿を毛布で包み込み、広間のあちこちに思い思いの体勢で休んでいる。敬虔にして荘厳な大聖堂に全く似つかわしくない、まるで場末の救貧院のような光景。
「難民たち、ですか。彼らは何故?」
「教皇聖下の御采配で、彼らの行き先の準備が整うまでと、一時ここを滞在所として開放しております」
「……聖堂議会の反撥も強かったでしょうに……良く開放出来ましたね。この大聖堂は、ロマリアの象徴でしょうに」
アンリエッタの呟きに、ジュリオは悲しげな眼差を向け頷いた。
「はい。悲しいことに、“光の国”と詠われながらも、ロマリアはそのような国ではありません。どうしようもない程に、世界は矛盾に満ちています。教皇聖下は、それをどうにかして解きほぐそうとしているのですが……」
「解きほぐす……ですか。それは……とても素晴らしい話ですね」
ジュリオに頷きながら、アンリエッタは先へと進む。
話によると、ロマリア教皇―――聖エイジス三十二世は、現在、執務室で会談中とのことであった。そのため、アンリエッタたちは、時間が
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