第十三章 聖国の世界扉
第一話 差し伸ばされる光
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ニアの列強国に比べれば国力は低く、また、その生まれ故か、各都市国家は独立意識が高いため、意思統一を図ることが難しく外交戦略に弱さを持っていた。国力は低く、外交も弱い。列強国にとってロマリア連合皇国は良い獲物であった。だが、そう易々と食われる“皇国”ではなかった。不利を覆すための手を“皇国”は創り出した。それが、“ブリミル教の中心地”である。元々ブリミル教の始祖であるブリミルが没した地であるロマリアは、祖王である聖フォルサテが“墓守”として築いた王国であった。そのため、この地を“ブリミル教の中心地”とする事には何も難しいことはなかった。ロマリアの者たちは、その歴史的事実を大いに利用し、ロマリアの首都を“聖地”に次ぐ神聖な場所であると規定したのだ。
それにより、この『ロマリア連合皇国』―――特にその首都である都市ロマリアは、彼らの思惑通り“ブリミル教の中心地”としての地位を確立し、結果、今では巨大な寺院が立ち並ぶようになった。その中でも一際目を引く寺院である聖フォルサテ大聖堂こそが、歴代の王―――何時しか“教皇”と呼ばれるようになった、全ての聖職者、そして信者の頂点である“ロマリア連合皇国”の王たちの“城”であった。
その王の待つ城へと向かうため、宗教都市ロマリアの地を進む馬車に乗っているのは、トリステイン王国の女王アンリエッタ―――そして―――。
「隊長殿。馬車に乗ってからずっと黙り込んだままですが……気分でも優れませんか?」
そのお付きであり護衛でもある銃士隊隊長のアニエスの二人であった。
アンリエッタは、馬車に乗った時からずっと黙り込んだまま座っていたアニエスに声を掛ける。
「あ、い、いえ、大丈夫です。その、ただ、慣れぬ格好ですので、その、落ち着かず……」
銃士隊の隊長として日々の勇ましい銃士隊の制服ではなく、ヒラヒラとしたドレスで身を着飾っていた。何時もの寄らば切るぞと言うような鋭い視線は、慣れぬ服装故かおどおどと揺らめいてまるで小動物のようだ。勇ましく凛々しい雰囲気も今はすっかりなりを潜め、何時もの騎士然した姿は一体何処へやら、一人の可愛らしいお嬢様の姿がそこにはあった。しかし、アンリエッタの声で我に返ったのだろうか、一度顔を左右に振るうと、アニエスの瞳の中にあったか弱さは掻き消え、良く見慣れた硬い鋼のような意思を感じられる鈍い光が瞳の中に灯った。とは言え、無骨な武人のような目が蘇ったはいいが、服装はどこぞのお姫様のようなヒラヒラとした可愛らしいものである。そのギャップに思わず変な風に口元が歪みそうになるのを必死に耐えながら、アンリエッタは表向きは平然とした様子で微笑んだ。
「あら、十分お似合いですよ」
「か、からかわないでください」
微かに赤く染まった顔を背けながら、アニエスは小さく呟くように反
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