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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
錬金術師の帰還篇
34.洋上の慮外
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かし、偽った笑みだと一瞬でわかる。
「ニーナ、彩斗!」
古城の声に彩斗は飛行船へと歩みを進める。
『絶対帰ってきてください』
ラ・フォリアの声に彩斗は不器用な笑みを浮かべて一言だけ返した。
「当たり前だ!」
叶瀬夏音はフェリーの船首に一人きりで立っていた。
背後には見渡す限りの青い空と、紺碧の海。
そこに白いコートを着た錬金術師が、彼女を追い詰めるように甲板に立っている。
「鬼ごっこは終わりだよ」
無邪気に微笑みを浮かべながら、両腕を広げて天塚が言う。
夏音は逃げるように後ずさる。しかし彼女の背中はすぐに手すりにぶつかった。もう逃げ場はない。
だが、夏音の瞳は、天塚を哀れむように見つめて揺れていた。
「まだ思い出せないのですか」
夏音が唐突に問いかけた。天塚がかすかに表情を震わせた。
「……なに?」
「私はあなたのことを覚えていました。修道院のみんなが殺されたときのことも」
夏音はまっすぐ天塚を見つめている。
「あなたは、可哀想な人でした。自分が騙されていることにも気づいていない」
「なんのことだよ?」
天塚が苛々と訊き返す。
「“
賢者
(
ワイズマン
)
”を復活させて、あなたはなにをしたかったのですか?」
「決まってるだろ。人間に戻るんだ。あいつに喰われた僕の半身を復活させてもらうんだよ! でなきゃ、誰がやつのいいなりになんかなるものか!」
天塚がそう言って、コートの襟元を引き裂いた。金属生命体に侵食された不気味な右半身が露わになる。それでも夏音は表情を変えない。
「だったら教えてください。あなたはいったい誰でしたか……?」
「え?」
「あなたが本当に人間だったというのなら、そのころの思い出を聞かせてください。あなたがいつ、どこで生まれて、どんなふうに生きてきたのかを──」
夏音が質問を終えると静寂が訪れた。
天塚は答えられない。答えることができないのだ。その事実は天塚をじわじわと追い詰める。
「黙れよ……叶瀬夏音……」
天塚が絞り出すように呟いた。
「“
賢者
(
ワイズマン
)
”はあなたの願いを叶えたりはしない。なぜなら、あなたが人間だったことはないのだから。あなたは“
賢者
(
ワイズマン
)
”が自分を復活させるために創り出した──」
「黙れええええっ!」
天塚がついに怒声を放った。刃と化した彼の右腕が、夏音の心臓をめがけて突き出される。それを彼女は避けられない。
自らの死を覚悟した夏音の耳は祝詞をとらえる。
「虚栄の魔刀、夢幻の真龍、荒れ狂う
生命
(
いのち
)
の源より、悪しき者を浄化せよ──!」
突如として出現した水流の刃が天
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